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リハビリテーション専門職には是非知っていただきたい子どもの発達過程について~②言語(~12カ月まで)~

 こんにちは!  今日は子どもの発達過程において、言語の視点からお話させていただきたいと思います。言語といえば、言語聴覚士が専門分野なのですが、作業療法士としても知っておく必要があると思います。作業療法士は、日常生活の中でも他者との交流やコミュニケーション面にもアプローチをしていくため、その中で言語聴覚士とディスカッションできる程度の知識・技術は必要かと考えています。そこで、今回は言語の視点からお話していきたいと思っています。本日もどうぞよろしくお願い致します。  前回までの内容である①運動に関しては、 リハビリテーション専門職には是非知っていただきたい子どもの発達過程について~①運動(背臥位)~ リハビリテーション専門職には是非知っていただきたい子どもの発達過程について~①運動(腹臥位)~ リハビリテーション専門職には是非知っていただきたい子どもの発達過程について~①運動(座位・立位)~ の記事をご覧ください。  まずは最初にひとはどのようにして言語機能を使っているのかをお話したいと思います。 <言語機能を使うために必要な力> 1.受容:視覚・聴覚情報を受け取り理解する力 2.連合:受け取った情報をこれまでの知識・経験と意味を成すよう関連付け・操作する力 3.表出:受容した情報・自身の考えを言葉・動作で表現する力 4.構成:文章を作りまとめる・活用する力 5.記憶:聴覚・視覚情報を正しく受け取り使用する力  大まかに分けて上記5つの力を使いながら言語機能を働かせています。そのため、この5つの機能の中でどこが欠けてもうまく働くことはできません。私たちは、日々診療の中で「どの部分が得意でどの部分が苦手なのか」を評価し、その子に合わせてアプローチを行っていきます。 次に生まれてから12カ月までの言語の発達過程をお話していきます。 <言語の発達過程> ~2カ月 【親子の情動的関わりの始まり】 段階:聞き手効果段階(大人が反応を読み取り応えることでやりとりが成立する)。    周囲の環境に適応する準備期。    表現方法は、社会的微笑が主。人に伝える意思は少ない。    声の方を向くようになる。 特徴:探索、捕捉、吸啜、咬、嚥下といった原始反射がみられる。    声は意識的に出すことが難しく、時々音が鳴る程度。    音が聞こえると泣く・顔を注視する。 ~4か月 【...

リハビリテーション専門職には是非知っていただきたい子どもの発達過程について~①運動(座位・立位)~

こんにちは!  今日も前回の続きということで、子どもの発達過程について、座位・立位に着目してお話をしたいと思います。前回の内容は、 リハビリテーション専門職には是非知っていただきたい子どもの発達過程について~①運動(背臥位)~ 、 リハビリテーション専門職には是非知っていただきたい子どもの発達過程について~①運動(腹臥位)~ を読んでいただければと思います。腹臥位の発達では、背臥位と比べて私たちが見ている世界を見ることができるようになります。発達の中で、左右への重心移動ができるようになり、手を伸ばして物を掴むことが可能になります。そして、手が届かない物に対しても、触って確認しようとするのです。これが「移動」の始まりになります。このように、腹臥位の発達は、四つ這い、立位、そして歩行へとつながっていくのです。前回のお話を簡単に要約し、臨床での意義についてお話させていただきました。それでは、これからは運動の発達過程についての最後のテーマである「座位・立位」の視点からお話しようと思います。本日もよろしくお願い致します。 <運動の発達過程ー座位・立位ー> 生後間もない間は、初期起立反応により支えられながらの立位保持が可能になる。そして、徐々に初期起立反応が消失し、起立不能の段階が開始される。 ~1か月 座位:伸筋群の発達が不十分であるため、体幹が屈曲し顔が床に接触する 3か月~ 座位:定頸獲得時期 立位:ハイガード姿勢(支えられて) ⇒この時の立位保持では、抗重力姿勢の保持が乏しく反張膝になりやすい。 4か月~ 座位:リング座位獲得(不安定さあるため介助必要) 立位:徐々にローガードへ(支えられて) ⇒定頸に従い立位姿勢がハイガードからローガードへ移行する。 6か月~ 座位:リング座位の完成(上肢の支持あり) ⇒立ち直り反応の出現により、リング座位で側方への重心移動が可能になる。 ⇒リング座位にて、頸部ー体幹を正中位で保持することが可能になる。 立位:両手支持での立位保持が可能 7か月~ 座位:リング座位で前方へリーチが可能、物につかまっての両膝立ち獲得 ⇒座位姿勢において、頸部・体幹を回旋することが可能になるため、前方へリーチすることが可能になる。 立位:支えられながらの鶏状歩行が可能 8か月~ 座位:上肢の支持なしでの座位獲得、長座位保持獲得 立位:物につかまって片膝立ち...

リハビリテーション専門職には是非知っていただきたい子どもの発達過程について~①運動(腹臥位)~

こんにちは!  今日は前回の続きということで、子どもの発達過程について、腹臥位に着目してお話をしたいと思います。前回の内容は、 リハビリテーション専門職には是非知っていただきたい子どもの発達過程について~①運動(背臥位)~ を読んでいただければと思います。背臥位の発達では、手指や口を感覚器官として活用しながら、自分自身の身体の位置関係、いわゆる身体図式を覚えていきます。そして、背臥位姿勢にて手で足をつかんだり、触ったりする中で骨盤を床から持ち上げる動きや骨盤の傾斜・回線を行っていきます。背臥位で獲得するこの動きは、お座り以降の動きや活動に活用されていきます。これらのことが、背臥位の発達過程を理解する中でより重要な意義となってくると考えています。前回のお話を簡単に要約し、臨床での意義についてお話させていただきました。それでは、これからは運動の発達過程について、腹臥位の視点からお話しようと思います。本日もよろしくお願い致します。 <運動の発達過程ー腹臥位ー> 生後間もない間は、腹臥位を保持する時に重心が頭部寄りになっており、脊柱全体を丸くした姿勢になっている。 ⇒全体重の中で頭部が占める割合が大きく、頭部挙上位を保持し続けることが難しいため、こういった姿勢を保持している。 ~1か月:左右非対称性な姿勢を保持する(屈曲優位) ⇒頭部挙上位での保持が難しく、上肢の運動を行うことができない。 2か月~:顎部を挙上する程度の頭部挙上がみられる、下肢の屈曲位が減少する 3か月~:対称的な腹臥位を保持する、on elbowでの頭部挙上が可能になる ⇒四肢が屈曲位だけでなく、伸展位を保持することが可能になるため、重心が「頭部」から「胸腹部」へ移行する。 ⇒体幹を伸展位で保持することが可能になり、on elbowで姿勢を保持することができるようになる。これがパピーポジションの始まり。 ★頭部を挙上するにあたり、背臥位では5か月であるのに対し、腹臥位では3か月で可能になる。 4か月~:頭部を正中線上で90°挙上が可能になる、パピーポジションの完成 5か月~:左右非対称な姿勢が増えていく、on handsでの腹臥位保持が可能になる この頃になると正中線上の体幹の伸展が大きくなり、on handsでの腹臥位保持が可能になる。背臥位の中で手と手を合わせたり身体中を触ったりしていた動きが腹臥位で...

リハビリテーション専門職には是非知っていただきたい子どもの発達過程について~①運動(背臥位)~

こんにちは!  今日は発達作業療法士として必要な子どもの発達過程についてのお話をしたいと思います。①運動②言語③巧緻機能④認知⑤口腔機能それぞれに分けてお話したいと思っていますのでかなりの長編になるかと思います。この発達過程に関して、正常発達という言葉もございますが、何をもって正常なのか?人それぞれ育ち方も生き方も違うのではないか?という考えがありますので、ここでは発達過程という言葉でお話したいと思います。ここでお話する内容は、なぜそのような発達過程をたどるのかを脳のメカニズムやその過程を辿る要因を基に展開したいと思っています。ですので、必ずしもその過程が正しいというわけではないということを頭の片隅に入れていただければと思っています。また、成人を対象に作業療法を実施している方にとっても、発達過程は共通する面や治療のヒントになる面もあるため、是非一読していただければと思います。それではよろしくお願い致します。 <運動の発達過程ー背臥位ー> 出典: 体幹機能の発達 生後間もない間は、背臥位を保持する時に頭部を正中位で保持することは難しい。そのため、結果的に頭部は右か左側を向いていることが多い。頭部が向いている側の上肢は伸展しやすく、反対側の上肢は屈曲する傾向にある。 ⇒一般的にはATNR(非対称性緊張性頚反射)と呼びますが、反射というわけではなくそういった現象が起きやすいといった方が正しいと思います。 ~1か月:左右非対称性な姿勢を保持する(屈曲優位) ⇒胎内で生活を育むことで屈筋優位の姿勢になりやすい。低出生体重児であれば、体内での学習期間が短いため伸展優位の姿勢になりやすい。 2か月~:上下肢の屈筋優位が軽減する、対称的な活動が増えていく 3か月~:頸部が正中位へ定位するようになり対称的な背臥位を保持する、Hand to hand 赤ちゃんは頭部を正中位で保持することが可能になり、両手を握り合わせたり口に持っていくことが可能になる。 ⇒身体の中心に上肢や手指を持ってくることで、身体の端と中心軸を理解し始め、対称的な背臥位保持を保持することができるようになる。 4か月~:四肢の対照的な運動が増えていく、Hand to nee 両手を握り合わせたり口に持っていくことが可能になる時期では、肘関節は屈曲していたが、徐々に伸展することが可能になり、両下肢の挙上が可能になること...

失語症を理解するために②~失語症タイプの分類~

こんにちは。  今日は前回の続きということで、失語症を理解するために②~失語症タイプの分類~についてお話させていただきたいと思います。前回の内容は を読まれてみてください。前回は、言語の処理過程と処理過程に関連する領域や症状の分類についてお話させていただきました。そこで、今回は失語症タイプの分類を、症状と関連させてお話していきます。 <失語症タイプの分類> 出典: 失語のみかた:よりよい治療・リハビリテーションのために 語のシステム:失構音、音韻性錯語、語音弁別障害 音のシステム:単語理解障害、喚語障害 出典: 失語のみかた:よりよい治療・リハビリテーションのために 【伝導失語】 症状:音韻性錯語(失構音のない) 容認項目:語音弁別障害 【ウェルニッケ失語】 症状:単語理解障害、喚語障害、音韻性錯語 容認項目:語音弁別障害 出典: 失語のみかた:よりよい治療・リハビリテーションのために 【ブローカ失語】アナルトリー、喚語障害、失構音 【純粋語唖】 出典: 失語のみかた:よりよい治療・リハビリテーションのために 【超皮質性運動失語】 領域:補足運動野、左下~中前頭回(前頭葉背外側領域) 症状:喚語障害 容認項目:失構音、音韻性錯語、単語理解障害、語音弁別障害 ★超皮質性運動失語には大まかに2つのタイプがあり、①ブローカ失語からの部分回復タイプ②構音開始時の困難さを示すタイプに分けられる。 復唱が良好で、自発話が減少(超皮質性感覚失語では見られない場合が多い)する場合、超皮質性運動失語と呼ばれることが多い。 【超皮質性感覚失語】 症状:単語理解障害、喚語障害 容認項目:語音弁別障害 【健忘失語】 領域:下前頭回、側頭~後頭葉、角回 症状:喚語障害 【ブローカ領域失語】 領域:ブローカ野(ブローカ野=文理解) 症状:喚語困難+文理解障害 ということで、今回は失語症の分類についてお話させていただきました。明確な基準がない場合が多いため、病巣を基にどのような症状が出現するのかを推測することがより重要で、無理やりタイプに当てはめようとするとうまくいかない場合があります。失語症のタイプはあくまで参考までにしていただき、どのような症状が出現しているのかを意識して、臨床での評価・治療に取り組んでいただければと思います。 では今日はこの辺で。

失語症を理解するために①~言語処理過程と症状の分類~

こんにちは。  連日、水害のニュースが相次ぎ心を痛める思いで日々過ごしています。皆様もどうかご無事でありますよう心から願っています。少しでも穏やかに過ごせる日が来ますよう祈っています。  今日は「失語症を理解するために」というテーマでお話しようと考えています。「失語といえばSTだ!」と思われる方もいるかもしれませんが、作業療法士としても失語を理解することはとても重要だと思っています。作業療法士の養成校では、ブローカ失語とウェルニッケ失語とは何か?程度にしか学ぶことが少ないかと思われますが、実際はより複雑で理解することが難しいものだと考えています。私も臨床で「どのような分類があり、アプローチが効果的なのか?」を知りたく、北海道大学の大槻先生の講義にて失語について学んだ過去があります。失語を理解し、作業療法の中にも、治療要素を組み込むことができると思いますので、まずは失語の分類や画像の見方についてのお話をしていきたいと考えています。 <言語処理の過程> 出典: 失語のみかた:よりよい治療・リハビリテーションのために  この図は、言語の処理過程とその障害により生じる症候、および、その言語の処理過程に関与する脳部位を示したものです。 情報の出入り口(モダリティとして音を用いる)⇒聴覚処理・構音実現 言語情報の出入り口(モダリティとして音を用いる)⇒音声処理・構音制御 音韻の処理(モダリティフリー)⇒音韻処理 語の処理(モダリティフリー)⇒語彙処理・意味処理  音韻の処理と語の処理(語彙処理・意味処理)は、モダリティがフリーであるため聴覚入力だけでなく視覚入力でも同じような処理過程を辿ります。 <失語症症状の分類> 【失構音(発語失行、アナルトリー)】 症状:構音の歪み・音の連結不良・抑揚異常を認める。   構音の誤り方に二重の非一貫性がある。   ①ある音素を構音しようとするとある時は誤り、ある時は正しく構音する   ⇒whenの非一貫性   ②誤る場合にその誤り方が一定ではなく、色々な誤り方をする   ⇒howの非一貫性 領域:左中心前回中~下部(下端以外)   ブロードマン4野中心の病巣:構音の歪み中心   ブロードマン4野+6野の病巣:構音の歪み+音の連結不良 ★失構音と構音障害の違い 失構音:音実現のプログラム・指令の問題 構音障害:音実現の実行器官の問題 【音韻性...

マイノリティとマジョリティーリハビリテーションの専門職の立場からー

こんにちは。  今日はリハビリテーションの知識や技術についてのお話ではないのですが、リハビリテーションマインドとして、僕自身がいつも考えていることについてお話したいと思っています。テーマでもあるように、今日は「マイノリティ」と「マジョリティ」についての考え方から少しお話しようと思います。 【マジョリティとマイノリティ】  まずマジョリティという言葉についてですが、一般的には「社会的少数者」という意味になるかと思います。例えば、日本に住んでいる外国籍の方であったり、左利きの方であったりと、その概念は多種多様に構成されているといえます。反対にマイノリティは「社会的多数者」と呼ばれ、社会はマイノリティ側に傾いた構成になっていると考えられます。今はユニバーサルデザインやバリアフリーといった考え方が主流になり、誰でも安心して生活できるような社会になってきていますが、以前はよりマイノリティに沿った社会構成であったと感じています。 【作業療法士にとってのマジョリティ】  ではこの概念からどのようにリハビリテーションに結びつけるのか?疑問に思う方もいるかもしれません。では作業療法士という仕事の特性から考えてみましょう。作業療法士における臨床推論(クリニカルリーズニング)の根っこの部分にあるのは、”ナラティブ”、いわゆるその方のライフストーリーにあるといえます。この”ナラティブ”というものは、文化やその人の考え方そのものが含まれています。これらを尊重し、今後の生活に結びつけていく仕事こそが作業療法の根幹だと考えています。  たとえ同じ疾患だったとしても、その人それぞれに個性があるのです。例えば掘りごたつでの生活を送ってきた方にとっての当たり前は、テーブルでの生活ではなく掘りごたつでの生活になります。こういった、対象者の”ナラティブ”を大切にし、どのような生活を送りたいのかを考え、支援していける作業療法士でありたいと常日頃から思っています。 【リハビリテーション専門職自身にとってのマジョリティ】  次はリハビリテーション専門職自身にとってのマジョリティとは何か?について話していきたいと思います。理学療法士・作業療法士の養成校が増大している昨今、診療において一定の治療結果を担保することができているのか?専門職としての水準を保つことができているのか?多くの議論が巻き起こっていると感じていま...

末梢神経障害を正しく評価するために+α~下肢編~

こんにちは!  今日は「末梢神経障害を正しく評価するために」シリーズのおまけ回として、下肢編についてお話していきたいと思っています。このシリーズを書き始めた時は、上肢編のみでいったん終わりにしようと思っていたのですが、臨床でも下肢の末梢神経障害を多くお見掛けしますし、誰もが避けては通れないと思うようになったので、まとめてお話しようと思いました。前回までの内容に関しましては、 末梢神経障害を正しく評価するために①~末梢神経障害の基礎知識~ 、 末梢神経障害を正しく評価するために②~末梢神経障害に共通する評価~ 、 末梢神経障害を正しく評価するために③~正中神経麻痺~ 、 末梢神経障害を正しく評価するために④~尺骨神経麻痺~ 、 末梢神経障害を正しく評価するために⑤~橈骨神経麻痺~ を見ていただけたらと思います。本日もどうぞよろしくお願い致します。 <下肢神経の解剖> 坐骨N(梨状筋症候群etc)⇒総腓骨N⇒浅腓骨N                  ⇒深腓骨N             ⇒脛骨N 大腿N⇒大腿N     ⇒伏在N(Hunter菅症候群etc) <代表的な疾患> ①梨状筋症候群 坐骨神経が生理的狭窄部位である梨状筋部で圧迫を受け発症する。梨状筋周囲を圧迫し、圧痛と放散痛の有無、下肢の内旋で症状が増悪するかを評価する。 症状:知覚異常、坐骨神経が支配する筋の麻痺、臀部周囲のしびれ感・疼痛 ②Hunter菅症候群 伏在神経が内側広筋と大内転筋を結合する繊維束で形成されるHunter菅の通貨部で圧迫され発症する。 症状:膝関節内側部痛・知覚異常 <スクリーニングによる鑑別方法>  実際に臨床で下肢の末梢神経障害の疑いがある方の評価をする時に、私がまず行っているスクリーニングの評価を紹介します。 ・筋力(麻痺の有無)  足関節背屈/外返し⇒腓骨神経麻痺の鑑別  足関節底屈/内返し⇒脛骨神経麻痺の鑑別 ※厳密に言うとそれぞれの筋の機能によって働きが違うため、スクリーニングで評価を行った後に、それぞれの筋の機能の評価を行います。 ・感覚(知覚障害の有無)  下腿~足部前面⇒腓骨神経による知覚障害の鑑別  下腿~足部後面⇒脛骨神経による知覚障害の鑑別 ・TinelSign  これらのスクリーニングによるテストは、10分以内で評価可能であるため、問診を行った後に、これらの...

末梢神経障害を正しく評価するために⑤~橈骨神経麻痺~

こんにちは!  今日は末梢神経障害の中でも橈骨神経麻痺についてのお話をしたいと思います。今回でいよいよ第5回目になります。前回までの内容に関しましては、 末梢神経障害を正しく評価するために①~末梢神経障害の基礎知識~ 、 末梢神経障害を正しく評価するために②~末梢神経障害に共通する評価~ 、 末梢神経障害を正しく評価するために③~正中神経麻痺~ 、 末梢神経障害を正しく評価するために④~尺骨神経麻痺~ を見ていただけたらと思います。本日もどうぞよろしくお願い致します。 <橈骨神経の解剖>  腕神経叢の後神経束から腋窩神経とともに起始し、C5~C8までの神経線維を含んでいる。腋窩神経と分かれた後、腋窩動脈の背側を末梢に向かって走る。次第に外側後方に向かい上腕骨の橈骨神経溝に沿って上腕骨後方から外側へと回る。肘部の前面で浅枝(知覚神経)と深枝(運動神経)に分かれる。深枝は回外筋を貫通し前腕の背側に至る。 ・高位麻痺:上腕部で損傷 ・低位麻痺:前腕で損傷 <代表的な疾患> ①外傷 上腕骨骨幹部骨折に合併して発症することが多い(特に上腕骨螺旋骨折によるもの)。また、骨折によるギプス固定や術後において、不良肢位を維持することで発症することがある。 症状:知覚異常、腕橈骨筋、長・短橈側手根伸筋、総指伸筋、小指伸筋、示指伸筋、長母指外転筋、長・短母指伸筋、尺側手根伸筋、回外筋の麻痺(主に前腕後面~手背の筋) ②後骨間神経麻痺 回外筋を通過するところで橈骨神経の深枝(運動神経)が絞扼を受け神経障害が発生する。ガングリオン、橈骨頭の脱臼などによる圧迫や神経炎で発症することが多い。橈骨神経支配領域に知覚障害がないこと、手関節背屈が可能なこと(この場合下垂指になる)で鑑別ができる。 症状:総指伸筋、小指伸筋、示指伸筋、長母指外転筋、長・短母指伸筋、尺側手根伸筋、回外筋の麻痺 ⇒橈側手根伸筋は麻痺を免れるため、手関節伸展の時に橈骨へ偏位しながら背屈を行う。 <橈骨神経麻痺の症状> ・高位型 低位型の障害に加えて、腕橈骨筋、長・短橈側手根伸筋の麻痺⇒下垂手(drop hand) 下垂手の場合、手関節掌屈位のまま手指操作を行うため、手指を強く屈曲することが難しい(握力の低下)。 母指~環指橈側手背の知覚障害 出典: 末梢神経損傷の治療  今日は、橈骨神経麻痺を評価する上で必要な知識と評価方法に...

末梢神経障害を正しく評価するために④~尺骨神経麻痺~

こんにちは!  今日は末梢神経障害の中でも尺骨神経麻痺についてのお話をしたいと思います。今回で第4回目になります。前回までの内容に関しましては、 末梢神経障害を正しく評価するために①~末梢神経障害の基礎知識~ 、 末梢神経障害を正しく評価するために②~末梢神経障害に共通する評価~ 、 末梢神経障害を正しく評価するために③~正中神経麻痺~ を見ていただけたらと思います。本日もどうぞよろしくお願い致します。 <尺骨神経の解剖>  腕神経叢の内側神経束の延長で、主にC8,Th1からの神経線維で構成されている。腋下動脈の内側を末梢に向かって走り上腕の中央で背側に向かい、内側筋間隔膜を貫き上腕三頭筋内側頭の前方に至る。肘関節の内側後方で尺骨神経溝を通り前腕に至る。尺骨手根屈筋の上腕骨頭と尺骨頭の間を抜け深指屈筋の尺側掌側縁に沿って末梢へ向かう。手関節部でギオン菅(尺骨神経管)を尺骨動脈とともに通過し浅枝と深枝に分岐する。浅枝は指神経として小指と環指の尺側の皮膚に分岐する。深枝は小指球を形成する筋に枝を出した後、環指と小指の虫様筋、すべての骨間筋、母指内転筋に枝を出す。 ・高位麻痺(肘部管症候群など):上腕、肘関節部で損傷 ・低位麻痺(ギオン菅症候群など):前腕遠位部、手関節部で損傷 <代表的な疾患> ①肘部管症候群 尺骨神経は尺側手根屈筋の筋膜を貫いて前腕深部に到達する。この部分を肘部管と呼び、この部分で圧迫され緩徐な経過で神経障害が発生する。 症状:環指尺掌側、小指掌側のしびれ感、知覚異常、環・小指の深指屈筋、尺側手根屈筋、母指内転筋、小指球筋、骨間筋、環指・小指の虫様筋の麻痺 ②ギオン菅症候群 ギオン菅部でガングリオンや外傷により絞扼を受け発症する。 ⇒ギオン菅:基底部を横手根靭帯尺側付着部、豆状・有鈎靭帯、尺側は豆状骨と尺側手根屈筋腱、橈側は有鈎骨の鈎、蓋は掌側手根靭帯からなるトンネルのこと。  ギオン菅内を尺骨神経と尺骨動脈が通る。 症状:手掌の小指球部、環指尺掌側、小指掌側のしびれ感、知覚異常、母指内転筋、小指球筋、骨間筋、第三・四虫様筋の麻痺 <尺骨神経麻痺の症状> ・高位型 低位型の障害に加えて、尺側手根屈筋の麻痺⇒手関節掌屈運動障害 深指屈筋の尺側半分の麻痺⇒環指・小指DIP関節屈曲障害 ・低位型 小指球筋の麻痺⇒手指横アーチの崩れ+、母指と小指の対立運動障害...

末梢神経障害を正しく評価するために③~正中神経麻痺~

こんにちは!  今日は末梢神経障害の中でも正中神経麻痺についてのお話をしたいと思います。今回で第3回目になりますね。これからは各論のお話をしていきたいと考えています。前回、前々回の内容に関しましては、 末梢神経障害を正しく評価するために①~末梢神経障害の基礎知識~ 、 末梢神経障害を正しく評価するために②~末梢神経障害に共通する評価~ を見ていただけたらと思います。 <正中神経の解剖>  腕神経叢の鎖骨下部(C5~Th1)外側神経束および内側神経束から出る外側根および内側根が結合し生じる。両根は結合し正中神経となり、内側上腕筋間中隔中を下って肘関節の高さまで達した後、円回内筋の二頭間を通って前腕に達し手根管を通って手掌に至る。   ・高位麻痺(円回内筋症候群など):前腕近位、上腕で損傷 ・低位麻痺(手根管症候群など):手関節部で損傷 <代表的な疾患> ①手根管症候群 手根管部で腱鞘炎などにより管腔が狭くなり発症する。腱鞘炎などにより、手根管部が主張し圧迫され、神経障害が発生する。 ⇒手根管:有鈎骨、有頭骨、小菱形骨、大菱形骨と屈筋支帯に囲まれた管腔のこと。  手根管内を正中神経、長母指屈筋腱、橈側手根屈筋腱、浅・深指屈筋腱が通る。 症状:疼痛、しびれ感、知覚異常、母指対立運動障害、手根部の圧迫による症状の再現 ②円回内筋症候群 円回内筋の二頭間を通るところで絞扼を受け発症する。 症状:第二・三指深指屈筋、長母指屈筋、第一・二虫様筋、浅指屈筋、方形回内筋の麻痺、円回内筋部での圧痛・放散痛・知覚異常、第一~三指屈曲障害と対立障害 ③前骨間神経麻痺 神経炎や上腕骨顆上骨折などの外傷により発症することが多い。運動神経のみで知覚枝を含んでいない。 症状:示指・中指の深指屈筋、長母指屈筋、方形回内筋の麻痺 <正中神経麻痺の症状> ・高位型 低位型の障害に加えて、橈側手根屈筋、長掌筋、浅指屈筋、深指屈筋(示指・中指)の麻痺⇒示指・中指の屈曲運動障害 長母指屈筋の麻痺⇒母指屈曲障害 円回内筋、方形回内筋の麻痺⇒前腕回内障害 橈側三指が屈曲できない、母指球筋の萎縮⇒猿手(ape hand) 出典: 末梢神経損傷の治療 ・低位型 短母指外転筋、短母指屈筋浅頭、母指対立筋の麻痺⇒母指対立障害・母指掌側外転障害 母指、示指、中指、環指橈側半分の知覚障害 <誘発テスト> PhalenTest...

末梢神経障害を正しく評価するために②~末梢神経障害に共通する評価~

こんにちは!  今日は末梢神経障害に必要な評価のお話をしたいと思います。前回の内容に関しましては、 末梢神経障害を正しく評価するために①~末梢神経障害の基礎知識~ を見ていただけたらと思います。代表的な末梢神経障害の原因となる疾患として、手根管症候群やギオン菅症候群などがありますね。今回は、これらの疾患に共通する評価について説明していきたいと思います。  まず、最初にお話しするのは「問診」についてです。「問診」は、初回介入時に行う最初の評価であり、かつ、様々な評価の中で一番重要であると考えている項目になります。この「問診」を曖昧にしていると、いくら整形外科テストやクリニカルテストを行っても、その症状が改善するのか?症状の原因は何なのか?を理解することが難しく、そもそも臨床推論(クリニカルリーズニング)になりません。まだ、経験が少ないセラピストはあまりピンとこないかもしれませんが、この「問診」こそが、今後診療を行う上でも土台になると考えています。  「問診」のポイントとしては、①いつ頃からしびれや疼痛がみられているのか?①どういった時に痛みが生じるのか?③痛みの程度はどのようなものか?といったことが基本的なことになります。また、放散痛があるか?や痛みの変化についても問診する必要があります。  僕はこれらの問診に加えて、対象者のナラティブスロープを作成したり、短期目標と長期目標を一緒に設定することを重要視しています。疾患を理解するための問診と対象者の生活を理解するための問診をミックスすることで、より包括的なアプローチにつながってくると考えています。  次に感覚テストとして「S-WTest(Semmes-Weinstein Monofilaments)」を行うことが重要になります。脳卒中の方には、筆やピンなどを用いた簡便な感覚テストをすることでおおまかな感覚障害の病態について理解することができるのですが、末梢神経障害であれば、神経分枝のどの部分の障害なのかを理解する必要があるため、髄節のレベルや障害を受けているであろう部位を正確に把握することが重要になります。そのため、「S-WTest」を行い、障害の程度をマッピングする必要があるのです。  障害部位の認識を行う上で必要になる評価は、「TinelSign」をよく用いています。「TinelSign」は神経が再生しているのかを...

末梢神経障害を正しく評価するために①~末梢神経障害の基礎知識~

こんにちは。  新年度1回目の投稿になります。今年度もどうぞよろしくお願い致します。今年度から新社会人として臨床に従事された皆様、ともに同じ業界の人間として一緒に盛り上げていければと思います。まずは目の前にあることに真摯に向き合うこと。そして、どのようなセラピストになりたいのかを自分なりに考えること。それぞれ、目標は違えどビジョンをもって励んでいただければと思います。  今日から5回に分けて「末梢神経障害を正しく評価するために」といったテーマでお話を展開できればと考えています。私自身、整形外科病院で働いた経験がなく、ハンドセラピィを中心に治療展開している方から見ると、まだまだ勉強不足の点があるかと思いますがどうぞよろしくお願い致します。  まず第1回目となる今日は、そもそも末梢神経障害とは何なのか?についてお話したいと思います。 <末梢神経とは?>  脊髄神経が脊髄硬膜を出た部位より遠位の神経線維の総称。 <末梢神経の構造> 出典: 末梢神経損傷の治療 軸索は神経細胞の突起のことであり、数千本の軸索が神経周膜に包まれて神経束を形成する。数本の神経束を神経上膜が囲み末梢神経を構成している。 <末梢神経障害の定義>  末梢神経が何らかの直接的・間接的原因により可逆的・不可逆的な障害を被るもの。 <損傷の病態による分類(Seddonの分類を基に)> 出典: 末梢神経損傷の治療 Neurapraxia(一過性伝導障害)  機能的に伝導性が遮断されている状態。麻痺している筋は損傷部からの距離と無関係にほぼ同時に回復する。回復に要する時間は数分から数週間、通常12週間以内に自然回復する。損傷部位では伝導障害を認める。 Axonotmesis(軸索断裂)  神経軸索のみが断裂している状態。シュワン管および神経周膜の連続性は保たれている。麻痺している筋は神経の分枝高位に従って順次回復していく。通常は自然回復が期待できる。 Neurotmesis(神経断裂)  神経幹・神経束の連続性が絶たれている状態。切断部位より末梢の軸索はWaller変性に陥る。中枢側の端も逆行性変性が数髄節に生じる。再生軸索は損傷部で元来とは異なったシュワン管に入り、伸長し、間違った終末目的器官に到達する可能性があり、予後は必ずしも良好ではない。再生知覚神経が元来運動神経のシュワン管に入れば筋の回復は生じない。...

立位アライメントを評価する上でのポイント②~Kendallの分類を基に考える~

こんにちは!  今日も前回から引き続き、立位アライメントを評価する上でのポイントについてお話ししたいと思います。前回の内容は、 立位アライメントを評価する上でのポイント①~正常な姿勢アライメントから考える~ を参考にしていただければと思います。どうぞよろしくお願いします。  前回は立位姿勢の正常アライメントと見る視点を中心にお話しさせていただきました。そこで、今回は立位姿勢のパターン分類で有名な、Kendallの分類を基に展開したいと考えています。 <Kendallの分類> 出典: 小学校高学年の立位姿勢とその特徴 Kendallの分類は主に5つの姿勢パターンに分けられます。そこで、それぞれ分類別の特徴について解説していきます。 A.標準型(ノーマル) 矢状面における重心線:耳垂-肩峰の前方-大転子-膝蓋骨後面-外果の3cm前方 B.彎曲増強型(カイホロードシス) 姿勢の特徴:頭部前方位(頸椎過伸展)・胸椎後彎の増強・腰椎前彎の増強・骨盤前傾・股関節屈曲・膝関節過伸展 過緊張の筋:斜角筋、肩甲挙筋、前鋸筋、胸筋群、僧帽筋上部繊維、腸腰筋、大腿四頭筋 弱化している筋:脊柱起立筋群(胸腰部)、外腹斜筋、殿筋群、僧帽筋中部繊維 C.脊椎平坦型(フラットバック) 姿勢の特徴:頭部前方位・上部胸椎後彎・下部胸椎平坦・腰椎平坦・骨盤軽度後傾・股関節過伸展・膝関節過伸展 過緊張の筋:腹直筋、腹横筋、内外腹斜筋、ハムストリングス 弱化している筋:脊柱起立筋、腸骨筋 D.スウェイバック 姿勢の特徴:頭部前方位・胸椎後彎・骨盤後傾・股関節過伸展・膝関節過伸展 過緊張の筋:内腹斜筋、大腿筋膜張筋、ハムストリングス 弱化している筋:外腹斜筋、脊柱起立筋群、大殿筋、大腿四頭筋 E.腰椎過前彎型(ロードシス) 姿勢の特徴:頸椎過伸展・胸椎後彎・腰椎前彎の増強・骨盤前傾・膝関節過伸展 過緊張の筋:脊柱起立筋群(胸腰部)、腸腰筋、大腿四頭筋 弱化している筋:腹直筋、内外腹斜筋、脊柱起立筋群(腰仙部)、大殿筋  これらはあくまで参考程度にしかならないかとは思いますが、姿勢分析に苦手さがある方は、まずはこの分類に当てはめてみると良いかと思います。そして、筋活動にどのような変化がみられて...

立位アライメントを評価する上でのポイント①~正常な姿勢アライメントから考える~

こんにちは!  今日は立位アライメントを評価する上でのポイントについてお話したいと思います。整形疾患の方でも、中枢神経系の疾患の方でもこういった立位アライメントの評価に関しては共通する部分が多いと思います。評価をする上で大切なこととして、まずは正常な姿勢アライメントを理解することが重要です。セラピストとして、正常なアライメントからどこの部分にずれが生じているのかを把握し、基礎疾患や生活パターン等から調整する部分をピックアップすること、その後治療を行っていくといったことが必要になります。今回のお話は2回に分けようと思いますので、お時間のある方はお付き合いよろしくお願いします。 <立位姿勢における評価のポイント> 出典: 姿勢の評価と治療アプローチ 【前額面(前方)】 ①頭部:側屈/回旋の非対称性 ②鎖骨:挙上/回旋の左右差 ⇒鎖骨は肩関節運動と連動して働くため、肩甲骨との位置関係を評価することも大切になります。 ③肩峰:挙上/下制の左右差 ④肩甲骨:挙上/下制・前後傾の程度 ⑤胸郭:挙上/回旋の左右差 ⑥上肢:肩関節内外旋/内外転/屈伸の程度 ⑦骨盤:回旋/傾斜の左右差 ⇒骨盤前後傾中間位:ASISよりPSISが2~3横指上方 ⇒Jacoby line:L4~L5の腰椎棘突起の間 ⑧股関節:骨盤に対する内外旋/内外転/屈伸の程度 ⑨膝関節:大腿・下腿のねじれ、屈伸の程度 ⑩下腿:足部に対する下腿の内外旋の程度 ⑪足関節・足部:踵骨接地の位置、内外果の高さ 【前額面(後方)】 ①肩甲骨:挙上下制、内外転、内外旋の程度 ⇒肩甲骨のランドマーク:上角;Th1~2 肩甲棘;Th7~8 内側縁~棘突起の距離; 7~8cm ②脊柱:屈曲/伸展、回旋、側屈の程度 ⇒上部胸椎:回旋優位 下部胸椎:屈伸優位 ③臀部:筋緊張(過緊張or低緊張)の程度 【矢状面】 重心線:耳垂ー肩峰の前方ー大腿骨大転子ー膝蓋骨後面ー外果の2~3cm前方 ①頭部:屈曲/伸展の程度 ②頸椎:胸椎に対する頸椎の屈曲/伸展の程度 ⇒頭部の位置が重心線の中でどこに位置するかが重要です。 ③肩関節:肩甲骨に対する上腕骨の内外旋の程度 ④胸腰椎:下部胸椎・腰椎の屈曲/伸展の程度 ⑤胸郭:挙上/回旋の左右差・程度 ⑥上肢:肩関節...

血液検査の見方~各臓器別に分けて考える検査項目と役割~

こんにちは!  今日は前回お話したように、血液検査の見方についての内容の最後になります。今回は新人や2~3年目に向けて書いている内容になりますので、血液検査が難しい!」と感じていらっしゃる方の参考になればと思います。前回までの内容は 血液検査の見方~まずは一般的な項目と役割から①~ と 血液検査の見方~まずは一般的な項目と役割から②~ でお話ししていますので、お時間がある方は読んでいただければと思います。  ということで、今回は各臓器別に分けて考える検査項目と役割についてお話していきます。よろしくお願いします。第1回、第2回に述べていない内容も追加で入っていますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。 <心臓> BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)  基準値:18.4pg/dl以下  高い場合:心不全(心不全判定基準:80pg/dl以上) NT-proBNP  基準値:125pg/dl  高い場合:心不全(心臓と腎臓の影響を受ける) Dダイマー  基準値:1.0μg/ml  高い場合:播種性血管内凝固症候群、急性深部静脈血栓症etc <肝臓> TP(総蛋白)  基準値:6.5~8.0g/dl  高い場合:脱水症、多発性骨髄腫etc  低い場合:低栄養、肝臓障害、腎臓障害、腹水・胸水の貯留etc Alb(アルブミン)  基準値:3.6~5.0g/dl  低い場合:低栄養、肝臓障害、腎臓障害etc TB(総ビリルビン)  基準値:0.2~1.2mg/dl  高い場合:黄疸 ⇒黄疸:ビリルビンが血液中に増加し、全身の皮膚や粘膜に過剰に沈着した状態。 AST(GOT)※アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼのこと。  基準値:10~3305IU/l  高い場合:肝臓障害、心臓障害etc ALT(GPT)※アラニンアミノトランスフェラーゼのこと。  基準値:5~30IU/l  高い場合:肝臓障害、心臓障害etc ⇒AST、ALTともに肝臓に高濃度に存在しているため、肝臓が傷害を受けると血中に放出されるため血清中の濃度が上昇する。 ALP(アルカリフォスタファーゼ)  基準値:100~350IU/l  高い場合:肝臓障害、胆道疾患、慢性腎不全、骨疾患etc γーGTP(γーグルタミントランス...

血液検査の見方~まずは一般的な項目と役割から②~

こんにちは!  今日は前回の続きということで「血液検査の見方~まずは一般的な項目と役割から②~」についてお話していきたいと思います。前回の内容は 血液検査の見方~まずは一般的な項目と役割から②~ をご参照していただければと思います。前回は主に生化学検査についてお話ししたので、今日は血液化学検査についての内容になります。少し短めの内容にはなりますが本日もどうぞよろしくお願い致します。 <血液学検査> WBC(白血球数)  基準値:3500~9000/μl  高い場合:急性感染症、肺炎、虫垂炎、扁桃炎、外傷etc RBC(赤血球数)  基準値:男性;430~570万/μl 女性;370~490万/μl Hb(ヘモグロビン、血色素値)  基準値:男性;14.0~18.0g/dl 女性;12.0~16.0g/dl HGB(ヘマトクリット)  基準値:男性;40~50% 女性;35~45% RBC、Hb、HGBともに高い場合は多血症、脱水症状等、低い場合はFeやビタミンB12、葉酸の欠乏、腎性貧血等のマーカーになります。 PLT(血小板数)  基準値:15~35万/μl  高い場合:炎症反応、多血症etc  低い場合:肝硬変、貧血etc フィブリノゲン  基準値:200~400mg/dl  高い場合:炎症反応  低い場合:播種性血管内凝固症候群 Dダイマー  基準値:1.0μg/ml  高い場合:播種性血管内凝固症候群、急性深部静脈血栓症etc  最後に記したDダイマーという検査項目は簡単に言うと血栓のできやすさに関するマーカーになります。深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症にも関係するマーカーとなりますので、長期臥床の方を離床する時や、脳卒中の方を離床する時には、必ずチェックする必要があります。  今日は内容としては少ないのですが、きりがいいのでこの辺で終わりたいと思います。次回は血液検査の診方としては最後の内容になりますので、お時間がある方は是非見ていただけたらと思います。 では今日はこの辺で。

血液検査の見方~まずは一般的な項目と役割から①~

こんにちは!  今日は血液検査の見方についてお話ししようと思います。血液検査は病院だけでなく、老人保健施設などのような地域で働く方にとっても、対象者の方の全体像を把握する上で非常に重要な役割を担っています。1年目や2年目の方で苦手に感じている方は多いのではないでしょうか?そこで、今日はよく臨床で目にすることが多い血液検査の項目と基準値や役割についてお話ししたいと思います。  まず血液検査を見る上で重要になるのが、血液検査はあくまでデータの一つであり、その結果だけで断定できるものではないということです。例えば「アルブミン値が低いから低栄養だよね。」と言っている方を見ることがあります。しかし、実際には栄養状態は良好だが、急性疾患によりアルブミン値が低下している、なんてこともよくあることなのです。このようにまずは血液検査と役割を把握することと、ほかの検査結果を加味した上で、断定ではなく想定したリハビリテーションの実施を行うことが大切になります。 <生化学検査> TP(総蛋白)  基準値:6.5~8.0g/dl  高い場合:脱水症、多発性骨髄腫etc  低い場合:低栄養、肝臓障害、腎臓障害、腹水・胸水の貯留etc Alb(アルブミン)  基準値:3.6~5.0g/dl  低い場合:低栄養、肝臓障害、腎臓障害etc A/G  基準値:1.1~2.0  低い場合:低栄養、肝臓障害、腎臓障害etc AST(GOT)  基準値:10~3305IU/l  高い場合:肝臓障害、心臓障害etc ALT(GPT)  基準値:5~30IU/l  高い場合:肝臓障害、心臓障害etc LDH  基準値:120~220IU/l  高い場合:肝臓障害、心臓障害、腎臓障害、肺疾患、血液疾患、悪性腫瘍etc ALP(アルカリフォスタファーゼ)  基準値:100~350IU/l  高い場合:肝臓障害、胆道疾患、慢性腎不全、骨疾患etc γーGTP  基準値:10~50IU/l  高い場合:アルコール性肝障害、肝臓障害etc Ch-E(コリンエステラーゼ)  基準値:185=415IU/l  高い場合:ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症etc HbA1c  基準値:4.3~5.6%  高い場合:糖尿病、腎不全etc BUN...

僕が一人の人として大切にしている言葉。

こんにちは!  大分寒くなってきましたね。僕の生まれは熊本でも山奥の田舎なので、今住んでいるところより5度くらい温度が低い場所で生活していたので、大して寒くは感じないのですが、今朝出勤する時に「もう冬だなー。」と感じた今日この頃でございます。  最近の僕はというと、少し大きめの発表が終わりひと段落がついたところです。でも今月も発表が控えているためあまり休んでられないのですが・・・。一歩ずつノルマを達成することができているので、個人的には一定の満足感があります。後はもう少しブログ更新の頻度を増やしたいのですがなかなかそうもいきません(泣)。  今年度は今のところ、思っている以上にやりたいことができているなぁと感じています。研修と発表をみっちり入れているので休む時間は少ないのですが、inputとoutputをバランスよくとれていると思っています。来年度の目標はというと、とにかく研究することだと思っています。なので来年の1月から4月にかけて研究デザインを3~4つは作成したいと考えています。更に高い壁になるので乗り越えるのは大変だと思っていますが、今の僕のレベルにある山はなんとか乗り越えられそうなので、新しいチャレンジをしていきたいと思っています。  と、僕の近況はこの辺にして今日は少し気楽なお話をしていきたいと思っています。作業療法士としてだけでなく、1人の人として僕が大切にしている「習慣」についてお話していきたいと思いますので今日もよろしくお願いします。  僕は2、3年目で「このままではクライエントのニーズに沿った診療が提供できないのではないか?」と思ったことをきっかけに身体機能面の勉強を集中的に行ってきました。そして、4年目で「このままの診療では理学療法士と大差ないんじゃないか?」と思ったことから作業療法士としての在り方について考えを深める時間をとるようになりました。そんな中出会ったMOHO(人間作業モデル)の概念や考え方に感銘を受け、日々の診療に応用するようになりました。このMOHOの4つの側面の内の一つが「習慣」です。結局、リハビリテーションの間だけ運動を提供することができても、退院してからの生活に反映されているのか?ということに気づくきっかけになりました。そこから、僕は「習慣」というテーマを日々の診療に反映させて、退院後も含めたクライエントの...

作業療法士に必要な臨床推論の考え方

こんにちは!  今日は作業療法士に必要な臨床推論の考え方についてお話したいと思います。小児分野のお話が続いたため、ややいきなり感はあるのですが、特に新人~3年目以内のスタッフに読んでいただきたい内容になると思っています。臨床推論、いわゆるクリニカルリーズニングについてお話したいと思っているのですが、それぞれの考え方があるため、僕の考え方も一考え方と思っていただけると幸いです。  臨床推論を行うために何が必要か?というとまずはクライエントを評価するにあたって必要な知識・技術があることが前提になります。また、人によっては経験が重要と言われる方もいらっしゃいますが、僕はそこまで重要なポイントではないと思っています。なぜなら経験に頼りすぎて基本的な知識・技術や現代医療の考え方・エビデンスを知らない・忘れているセラピストを多くお見かけするからです。経験も正しく使えば強力な武器になるのですが、僕自身が経験に頼りすぎないようにしているため、重要なポイントからは外して考えています。  そしてここが作業療法士が行う臨床推論の一番のポイントになるかもしれません。それは「ナラティブ的思考」をもつことです。ナラティブとは「自分自身によって語られる物語」のことです。これが臨床推論とどのような関わりがあるの?と思われる方がいらっしゃると思うので少し説明をしたいと思います。  作業療法士はクライエントの生活を支援する専門職です。そのため、例えば「買い物に行きたい」というデマンドをとっても、クライエントにとって「どのような手段か?」「どこまで行く必要があるのか?」「何のために買い物をするのか?」などといった目的や意義が変わってくるものです。また、「なぜそのような行為をしたいのか?」「その行為にどのような意味があるのか?」などのように、同じように見える生活行為もクライエントにとって、全く違う意味をもつ生活行為になります。  そのため、作業療法士はまずクライエントがどのような人物なのか、どのような生活を送ってきたのかを聞き取ったり感じとる必要があります。これが「ナラティブ的思考」のポイントになります。  そして、どのような人物でどのような生活を送りたいのかが分かったらアプローチに汎化させていきます。ここで臨床推論とつながってくるのです。クライエントの生活背景を理解し今後の支援...