こんにちは。
新年度1回目の投稿になります。今年度もどうぞよろしくお願い致します。今年度から新社会人として臨床に従事された皆様、ともに同じ業界の人間として一緒に盛り上げていければと思います。まずは目の前にあることに真摯に向き合うこと。そして、どのようなセラピストになりたいのかを自分なりに考えること。それぞれ、目標は違えどビジョンをもって励んでいただければと思います。
今日から5回に分けて「末梢神経障害を正しく評価するために」といったテーマでお話を展開できればと考えています。私自身、整形外科病院で働いた経験がなく、ハンドセラピィを中心に治療展開している方から見ると、まだまだ勉強不足の点があるかと思いますがどうぞよろしくお願い致します。
まず第1回目となる今日は、そもそも末梢神経障害とは何なのか?についてお話したいと思います。
<末梢神経とは?>
脊髄神経が脊髄硬膜を出た部位より遠位の神経線維の総称。
<末梢神経の構造>
出典:末梢神経損傷の治療 |
軸索は神経細胞の突起のことであり、数千本の軸索が神経周膜に包まれて神経束を形成する。数本の神経束を神経上膜が囲み末梢神経を構成している。
<末梢神経障害の定義>
末梢神経が何らかの直接的・間接的原因により可逆的・不可逆的な障害を被るもの。
<損傷の病態による分類(Seddonの分類を基に)>
出典:末梢神経損傷の治療 |
Neurapraxia(一過性伝導障害)
機能的に伝導性が遮断されている状態。麻痺している筋は損傷部からの距離と無関係にほぼ同時に回復する。回復に要する時間は数分から数週間、通常12週間以内に自然回復する。損傷部位では伝導障害を認める。
Axonotmesis(軸索断裂)
神経軸索のみが断裂している状態。シュワン管および神経周膜の連続性は保たれている。麻痺している筋は神経の分枝高位に従って順次回復していく。通常は自然回復が期待できる。
Neurotmesis(神経断裂)
神経幹・神経束の連続性が絶たれている状態。切断部位より末梢の軸索はWaller変性に陥る。中枢側の端も逆行性変性が数髄節に生じる。再生軸索は損傷部で元来とは異なったシュワン管に入り、伸長し、間違った終末目的器官に到達する可能性があり、予後は必ずしも良好ではない。再生知覚神経が元来運動神経のシュワン管に入れば筋の回復は生じない。
⇒連続性が完全に失われる場合(神経上膜まで断裂している)であれば自然回復はありえないため、神経修復術が必要になる。
<神経断裂後の変化>
①神経細胞体の変化
RNAが増加し軸索再生に必要な蛋白質の合成が増加する(損傷後10~20日頃まで)。
②切断部中枢側端の変化
切断された中枢側端から少なくとも近接するランビエの絞輪まで変性する。損傷後数日の初期遅延を経て変性の生じなかった中枢側断端より再生軸索の出芽が生じる。
③末梢側の神経の変化
切断された軸索や髄鞘はWaller変性に陥る。神経の再生速度は1日3mm~4mmであるが、初期遅延と終末遅延があるため、再生速度は1日1mm程度。
④標的器官の変化
筋組織:運動終板は1年程度存在するが、再生軸索が到達しない状態が続くと徐々に消失し始める。消失後の筋は再神経支配を受けても機能的な回復は見込まれない。
知覚:運動終板より比較的長時間生き残り、損傷後1年以上経過しても再神経支配にて機能を回復する可能性が高い。
<臨床症状>
①運動麻痺
脱神経後筋繊維は萎縮し結合組織・脂肪組織が増殖する。運動終板が消失後は再神経支配を受けても機能的に回復しない。
②知覚障害
脱神経後知覚受容体も変性するが、損傷後1年以上経過しても再神経支配にて機能を回復する可能性が高い。
⇒Tinel Sign:再生している神経線維の先端は機械刺激に極めて鋭敏で、そこの部分が軽く叩かれただけで放散痛を感じる(髄鞘が再生されていないため)
③自律神経障害
発汗異常:末梢神経には交感神経も含まれているため断裂により汗腺からの発汗が停止する。その領域は知覚領域と一致する。
以上が末梢神経障害を知る上での大まかな概要になります。まずは評価を行う前に、その方の末梢神経がどのような状態にあるのかを推測することが大切です。以前の記事でもお話したことがあるのですが、評価を行う基本としては、「整形外科テスト」と「姿勢・動作分析」の観点から包括的に見ることです。今回お話した内容を頭に入れておきながら、画像所見や問診を実施し、「整形外科テスト」や「姿勢・動作分析」を行うことで、より精密な評価が可能となると思います。次回は、末梢神経障害全般的に必要になる評価についてお話したいと思います。
では今日はこの辺で。
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