こんにちは!
今日は末梢神経障害の中でも橈骨神経麻痺についてのお話をしたいと思います。今回でいよいよ第5回目になります。前回までの内容に関しましては、末梢神経障害を正しく評価するために①~末梢神経障害の基礎知識~、末梢神経障害を正しく評価するために②~末梢神経障害に共通する評価~、末梢神経障害を正しく評価するために③~正中神経麻痺~、末梢神経障害を正しく評価するために④~尺骨神経麻痺~を見ていただけたらと思います。本日もどうぞよろしくお願い致します。
<橈骨神経の解剖>
腕神経叢の後神経束から腋窩神経とともに起始し、C5~C8までの神経線維を含んでいる。腋窩神経と分かれた後、腋窩動脈の背側を末梢に向かって走る。次第に外側後方に向かい上腕骨の橈骨神経溝に沿って上腕骨後方から外側へと回る。肘部の前面で浅枝(知覚神経)と深枝(運動神経)に分かれる。深枝は回外筋を貫通し前腕の背側に至る。
・高位麻痺:上腕部で損傷
・低位麻痺:前腕で損傷
<代表的な疾患>
①外傷
上腕骨骨幹部骨折に合併して発症することが多い(特に上腕骨螺旋骨折によるもの)。また、骨折によるギプス固定や術後において、不良肢位を維持することで発症することがある。
症状:知覚異常、腕橈骨筋、長・短橈側手根伸筋、総指伸筋、小指伸筋、示指伸筋、長母指外転筋、長・短母指伸筋、尺側手根伸筋、回外筋の麻痺(主に前腕後面~手背の筋)
②後骨間神経麻痺
回外筋を通過するところで橈骨神経の深枝(運動神経)が絞扼を受け神経障害が発生する。ガングリオン、橈骨頭の脱臼などによる圧迫や神経炎で発症することが多い。橈骨神経支配領域に知覚障害がないこと、手関節背屈が可能なこと(この場合下垂指になる)で鑑別ができる。
症状:総指伸筋、小指伸筋、示指伸筋、長母指外転筋、長・短母指伸筋、尺側手根伸筋、回外筋の麻痺
⇒橈側手根伸筋は麻痺を免れるため、手関節伸展の時に橈骨へ偏位しながら背屈を行う。
<橈骨神経麻痺の症状>
・高位型
低位型の障害に加えて、腕橈骨筋、長・短橈側手根伸筋の麻痺⇒下垂手(drop hand)
下垂手の場合、手関節掌屈位のまま手指操作を行うため、手指を強く屈曲することが難しい(握力の低下)。
母指~環指橈側手背の知覚障害
| 出典:末梢神経損傷の治療 |
今日は、橈骨神経麻痺を評価する上で必要な知識と評価方法についてお話させていただきました。橈骨神経麻痺の場合、下垂手なのか?下垂指なのか?であったり、知覚障害の有無を評価することで、高位麻痺と低位麻痺の判別を大まかにすることができると思われます。また、橈骨神経で障害されるのは、主に伸筋群ではありますが、機能的肢位である手関節背屈位を保持することが困難になるため、握力が低下しやすいといったことも、理解しておく必要があると思います。今回を持ちまして、末梢神経障害を正しく評価するために必要な知識について5回に分けてお話させていただきました。今回のシリーズは、主に上肢の神経障害についてのお話だけをしようと思っていたのですが、ついでに下肢の神経障害についても少しだけ話そうかなと思いましたので、次回はおまけ回として、下肢編のお話をしたいと思っています。
では今日はこの辺で。
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