こんにちは!
今日は大腿骨頸部骨折のお話の第3回になります。第1回は大腿骨頸部骨折の基礎知識➀~分類・手術編~、第2回は大腿骨頸部骨折の基礎知識➁~リハビリテーション編~をご参照ください。今日が大腿骨頸部骨折に関する内容として全3回の最後の回になります。この第3回は作業療法士としての腕の見せ所である人工骨頭置換術における生活指導についてのお話になります。
生活指導といっても、まずは禁忌肢位を理解することが大切ですが、どのように対象者の方に定着させるかがセラピストとしてより重要になると考えています。特に認知症がある方にはどのように指導すればよいのか、せっかちな性格の方だからなかなか禁忌肢位を守ろうとしないなど、ただ指導するだけでは定着につながらないので、どのような工夫をすれば良いのかポイントをまとめてお話ししたいと考えています。
まずは各アプローチ方法別の禁忌肢位についてお話します。
・後方アプローチにおける脱臼肢位→股関節屈曲・内転・内旋
・前方アプローチにおける脱臼肢位→股関節伸展・内転・外旋(+過屈曲)
脱臼リスクに関しては研究論文によって誤差はありますが約3%といわれています。また、前方アプローチでは後方アプローチよりも確率は低いとの報告が多くみられています。特に手術して2~3週間の対象者の方は脱臼リスクが高いため、術前から脱臼リスクの説明と生活指導を行う必要があります。
次に各アプローチ方法別の生活指導の例をお話しします。
・後方アプローチにおける生活指導の例(股関節屈曲・内転・内旋)
➀ズボンを履く際や靴下を履く際に深く腰を曲げる
→さらに股関節を内旋させるとよりリスクが高い
➁膝をついてベッドや椅子に登る
➂体育座りや正座の姿勢をとる
④椅子座位で足を組む
などなど・・・
・前方アプローチにおける生活指導の例(股関節伸展・内転・内旋)
➀立位で上方の物をとる際に、患側下肢を伸展させる
→さらに患側下肢を内転させるとよりリスクが高い
➁健側側への起居動作時に患側下肢を伸展内転させる
などなど・・・
これらの生活指導の例は作業療法士の方であればよく知っているような内容になるかと思います。最初にもお話したようにこれらの動作を防ぐためにどのような指導を行う必要があるのか、介入時の工夫についてお話したいと思います。
・動作指導のポイント
(1)入院時から(手術前から)手術後に脱臼リスクがあること、どのような動作に気を付ければよいのかを対象者の方に説明する
(2)看護師・介護士・理学療法士等とどのような動作に注意すべきかを共有し、生活上からチームアプローチとして実践する
(3)そもそもの禁忌肢位の動作を行わないような環境づくりを行う
(4)どのような指導方法が適しているのかを評価し実践する
(5)禁忌肢位をまとめた配布用シートを作成し提供する
(1)では、介入初期から説明することで対象者の心構えと習慣化を狙うことができます。また、ケースによっては自助具を紹介したり、退院後の生活プランを具体的に説明することで安心感をもたらすことができるように心掛けて関わっています。
(2)では、リハビリテーションの時以外にも適切な動作を生活上から反復することで、動作の習慣化を狙うことができます。
(3)では、生活の場を椅子にするように設定したり、ベッドを壁際に設置し健側から起居動作ができないようにしたり、高いところに物を置かないようにしたりと、禁忌肢位の動作を行う必要がないように環境づくりを行います。
(4)では、例えば認知症の方にはRBMT(リバーミード行動記憶検査)を行い、視覚と聴覚どちらの刺激に対する記憶が良好なのか、動作を反復する方が記憶に定着しやすいのかを推測することができます。
(5)では、入院時の生活~退院後の生活を踏まえた上で、配布用のシートを作成・提供し、生活の中で動作に迷いがあったら、シートを確認することで適切な動作を行うことができるように促すことができます。また、家族やケアマネジャーにも配布することで、退院後の生活支援につなげることができます。
最後に・・・
例えば回復期病棟を退院する時期には、脱臼リスクは大きく減少します。しかし、0%ではないため、どのような動作が危険なのか、どのような動作を行うと良いのかを通所介護サービスのスタッフやケアマネジャーに申し送る必要があると考えています。セラピストとしての責任を果たす必要があるためです。
また、退院後は転倒による脱臼リスクがあるため、最大能力で独歩可能であった場合も、T字杖や歩行器を用いた歩行形態で退院を目指すケースもあります。在宅で安全に生活を行うにはどのような歩行補助具や生活補助具を提供する必要があるのか、ケースによって吟味する必要があると考えています。
これで大腿骨頸部骨折の基礎知識全3回は終わりになります。基本的な知識に加えて、僕がこれまで経験したことや、それらを踏まえてどのようなことを考えながら介入しているのかを加えてお話してきました。これらのお話の中で何か参考になるような内容があればうれしい限りです。
では今日はこの辺で。
今日は大腿骨頸部骨折のお話の第3回になります。第1回は大腿骨頸部骨折の基礎知識➀~分類・手術編~、第2回は大腿骨頸部骨折の基礎知識➁~リハビリテーション編~をご参照ください。今日が大腿骨頸部骨折に関する内容として全3回の最後の回になります。この第3回は作業療法士としての腕の見せ所である人工骨頭置換術における生活指導についてのお話になります。
生活指導といっても、まずは禁忌肢位を理解することが大切ですが、どのように対象者の方に定着させるかがセラピストとしてより重要になると考えています。特に認知症がある方にはどのように指導すればよいのか、せっかちな性格の方だからなかなか禁忌肢位を守ろうとしないなど、ただ指導するだけでは定着につながらないので、どのような工夫をすれば良いのかポイントをまとめてお話ししたいと考えています。
まずは各アプローチ方法別の禁忌肢位についてお話します。
・後方アプローチにおける脱臼肢位→股関節屈曲・内転・内旋
・前方アプローチにおける脱臼肢位→股関節伸展・内転・外旋(+過屈曲)
脱臼リスクに関しては研究論文によって誤差はありますが約3%といわれています。また、前方アプローチでは後方アプローチよりも確率は低いとの報告が多くみられています。特に手術して2~3週間の対象者の方は脱臼リスクが高いため、術前から脱臼リスクの説明と生活指導を行う必要があります。
次に各アプローチ方法別の生活指導の例をお話しします。
・後方アプローチにおける生活指導の例(股関節屈曲・内転・内旋)
➀ズボンを履く際や靴下を履く際に深く腰を曲げる
→さらに股関節を内旋させるとよりリスクが高い
➁膝をついてベッドや椅子に登る
➂体育座りや正座の姿勢をとる
④椅子座位で足を組む
などなど・・・
・前方アプローチにおける生活指導の例(股関節伸展・内転・内旋)
➀立位で上方の物をとる際に、患側下肢を伸展させる
→さらに患側下肢を内転させるとよりリスクが高い
➁健側側への起居動作時に患側下肢を伸展内転させる
などなど・・・
これらの生活指導の例は作業療法士の方であればよく知っているような内容になるかと思います。最初にもお話したようにこれらの動作を防ぐためにどのような指導を行う必要があるのか、介入時の工夫についてお話したいと思います。
・動作指導のポイント
(1)入院時から(手術前から)手術後に脱臼リスクがあること、どのような動作に気を付ければよいのかを対象者の方に説明する
(2)看護師・介護士・理学療法士等とどのような動作に注意すべきかを共有し、生活上からチームアプローチとして実践する
(3)そもそもの禁忌肢位の動作を行わないような環境づくりを行う
(4)どのような指導方法が適しているのかを評価し実践する
(5)禁忌肢位をまとめた配布用シートを作成し提供する
(1)では、介入初期から説明することで対象者の心構えと習慣化を狙うことができます。また、ケースによっては自助具を紹介したり、退院後の生活プランを具体的に説明することで安心感をもたらすことができるように心掛けて関わっています。
(2)では、リハビリテーションの時以外にも適切な動作を生活上から反復することで、動作の習慣化を狙うことができます。
(3)では、生活の場を椅子にするように設定したり、ベッドを壁際に設置し健側から起居動作ができないようにしたり、高いところに物を置かないようにしたりと、禁忌肢位の動作を行う必要がないように環境づくりを行います。
(4)では、例えば認知症の方にはRBMT(リバーミード行動記憶検査)を行い、視覚と聴覚どちらの刺激に対する記憶が良好なのか、動作を反復する方が記憶に定着しやすいのかを推測することができます。
(5)では、入院時の生活~退院後の生活を踏まえた上で、配布用のシートを作成・提供し、生活の中で動作に迷いがあったら、シートを確認することで適切な動作を行うことができるように促すことができます。また、家族やケアマネジャーにも配布することで、退院後の生活支援につなげることができます。
最後に・・・
例えば回復期病棟を退院する時期には、脱臼リスクは大きく減少します。しかし、0%ではないため、どのような動作が危険なのか、どのような動作を行うと良いのかを通所介護サービスのスタッフやケアマネジャーに申し送る必要があると考えています。セラピストとしての責任を果たす必要があるためです。
また、退院後は転倒による脱臼リスクがあるため、最大能力で独歩可能であった場合も、T字杖や歩行器を用いた歩行形態で退院を目指すケースもあります。在宅で安全に生活を行うにはどのような歩行補助具や生活補助具を提供する必要があるのか、ケースによって吟味する必要があると考えています。
これで大腿骨頸部骨折の基礎知識全3回は終わりになります。基本的な知識に加えて、僕がこれまで経験したことや、それらを踏まえてどのようなことを考えながら介入しているのかを加えてお話してきました。これらのお話の中で何か参考になるような内容があればうれしい限りです。
では今日はこの辺で。
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