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4月, 2019の投稿を表示しています

作業療法士に必要なスキルはセンスである

こんにちは!  作業療法士に必要なスキルはセンスである。  これは、以前一緒に働いていた元課長からのお言葉です。先日、別のスタッフも似たようなことを話していたので、自分が考えるセンスについてをここでお話ししようと思っています。  Sense=感覚  直訳すればこうなりますよね。感覚。日常ではファッションセンスなどのように使っていますね。僕もよく使う言葉ではあります。このセンスという言葉と作業療法ではどのような関係があるのでしょうか。  作業療法士におけるセンスについて僕なりの解釈だと、患者様に対する気づきだと考えています。例えば、家に帰ってからどのような生活を送るのだろうかと考えたときに、ご飯は誰が作るのか、電子レンジはあるのか、日中は何をするのだろうか、スーパーはどこを使用するのだろうか、そのスーパーには段差があるのか、交通状況はどうなっているのか・・・・などなど多くのことを包括的に考えなければいけません。ここで大切なことは、患者様をどれだけ心配することができるかということです。この気づきこそが作業療法士としてのセンスなのかなあと考えています。  そして、もう一つ大切なことは日々の観察力です。患者様の日常生活面(食事や入浴など)やなにげない生活の中で、座位姿勢は安定しているのか、トイレに行きたいけど言葉にできないのではないのか、など患者様の機微を感じとることが大切だと思っています。リハビリを行っているときだけ頑張ればいいというわけではないということです。  作業療法士の主となる仕事は生活行為の向上であり、この生活行為は人によって様々です。いわゆる明確な答えがないのです。そのため、患者様を担当する作業療法士によって生活プランが変わってくるのです。その生活をプランニングする大切な役割を担っているために、どれだけの気づきやアプローチができるかが大切になると考えています。  一般的にこれらの能力は経験によって磨かれていくものです。しかし、このような視点をもとうとしていなければ、磨かれるものも磨かれません。日々の意識一つの積み重ねで変わってくるのです。そしてこの気づきの積み重ねと知識、技術の向上によりセンスは構築されていくものだと考えています。  僕は作業療法士としての視点を大切にしつつも、日々の診療で避けて通れない身体機能面もきちんと評...

筋力低下に対するアプローチを免疫学的視点で考える

こんにちは!  本日のテーマは「筋力低下に対するアプローチを免疫学的視点で考える」です。筋力をつけるとは言うものの、ただ筋トレをすれば良いわけではありません。僕が他の療法士の皆さんとお話しする中で負荷量の設定は考えながら行なっていても、栄養面や免疫系の働きなどまで考えながら行なっている方はそう多くはありません。皆さんはどうですか?   栄養面は最近の流行りではあるので考えている方も多いかもしれません。なので、今回は「免疫系」に焦点をあててお話をしていこうと思います。  まず皆さんご存知かもしれませんが、運動を行う効果として、 出典: 運動による健康増進の科学最前線                                                                                      などが挙げられます。上記の通り、運動と健康は密接な関係にあることがわかりますね。  そして、この効果の背景に「ミオカイン」と呼ばれる物質があります。このミオカインとは、骨格筋由来のサイトカイン(細胞から分泌される蛋白質)のことで、筋肉の肥大や再生を行います。しかし、ミオカインの効果は筋肉だけでなく、脳や血管など多くの組織に効果をもたらすことがわかってきました。  運動により認知症や生活習慣病の予防ができるという背景には、このような生理作用が関係するのです。  ここで高齢者の筋力低下について考えてみましょう。  筋力低下は萎縮とともにtypeⅠ(いわゆる遅筋)からtypeⅡ(いわゆる速筋)への変換を行なっていきます。すなわち、typeⅠはミトコンドリアと毛細血管を多く含むことから、減少することでミトコンドリアと毛細血管の数の減少につながっていくのです。 ...

深部腱反射を実施するにあたってのポイントと解釈の仕方

こんにちは!  今日は深部腱反射(以下DTR)を実施するにあたってのポイントと解釈の仕方についてお話ししようと思います。  DTRの検査はできても、腱反射のメカニズムや解釈の方法が難しいと思っている方も多いと思います。なので今回はポイントをまとめながら話させていただきます。  DTRとは筋の伸張反射に由来する反射のことです。すなわち、DTRのメカニズムを理解するにあたって伸張反射のメカニズムを理解する必要があります。  DTR時に発生する伸張反射は、速い筋伸張により生じる筋紡錘からの興奮が脊髄に伝わり、α運動ニューロンを興奮させ筋を収縮させる反射のことです。  ○伸張反射のメカニズム  ➀外力により筋紡錘が伸張する  ➁Ia群線維(筋紡錘の興奮を脊髄に伝える線維)が伸張されたことを伝達する  ➂α運動ニューロンが収縮の命令を筋に伝達する  ④伸張反射が出現する  というようにして伸張反射が出現します。DTRは、上位運動ニューロンの障害(脳血管障害など)で亢進し、反射弓の障害(頚椎症など)で減弱・消失します。  この理由について少し説明しますと、普段は上位運動ニューロン(網様体脊髄路など)により筋の緊張をコントロールしています。しかし、上位運動ニューロンの障害では、筋緊張のコントロールがきかなくなり、伸張反射を抑制することができず、亢進する現象がおきます。また、反射弓の障害では、筋の伸張そのものが伝わらないため、減弱・消失する現象がおきます。  次に筋緊張とDTRとの関係性についてお話しします。筋緊張とDTRは互いに関係しているのですが、同じというわけではありません。そのため、互いを区別して多角的に評価を行う必要があります。  下記の図は筋緊張とDTRの関係性を示したものです。 深部腱反射における検査のポイント ・痙縮:DTRと筋緊張が亢進している場合 ・弛緩:DTRと筋緊張が減弱している場合 ・一見弛緩様:DTRはやや亢進しているが筋緊張が低下している場合 ・強剛痙縮:DTRはやや亢進程度であるが筋が常時緊張している場合 →強剛痙縮と短縮の判断要素としては、ストレッチングや持続的伸張を行っても正常可動域よりマイナスである場合に短縮が混在している可能性があると推測します。  これらを正しく評価するためには...

立ち上がり動作を評価するポイントとアプローチ(アプローチ編)

こんにちは!  今日立ち上がり動作を獲得するための効果的なアプローチについてお話しさせていただきます。  立ち上がり動作における評価のポイントについては、以前お話した 立ち上がり動作を評価するポイントとアプローチ(評価編) をご参照ください。  以前お話しした立ち上がり動作における関係式T=K-(H+A)が成立しない場合、頸部や上肢の運動による代償動作が必要になります。代償動作がみられる状態で、立ち上がり動作を続けていると、アライメントの変化や痛みの出現につながることがあります。そのため、なるべく代償動作なく動作を遂行する必要があります。 立ち上がり動作を獲得するポイントとしては、 ➀筋力低下を認める筋に対してOKC(開放性運動連鎖)にてアプローチを行う。 ➁立ち上がり動作を相ごとに分けアプローチを行う。 ➂立ち上がり動作の練習を行う(運動学習)。 が挙げられます。僕はこの中で➀は理学療法士に行ってもらいながら、➁と➂をアプローチすることが多いです。  では、どのようなアプローチを行う必要があるのか。ここで、僕が普段行っているアプローチについて紹介したいと思います。 ○第1、2相に対するアプローチ 1)バランスボール転がし  端座位にて正面からバランスボールを触り、前方へ転がしていきます。これで、骨盤の前後傾自動運動と下腿の前傾運動を促すことができます。 2)ワイピング  端座位にて前方にテーブルを設置し、ワイピングを行います。これもバランスボール転がしと同じ目的で行いますが、主にバランスボール転がしが困難な方に用いています。骨盤と下腿の前傾運動に加えて、肩甲骨の外転・上方回旋、内転・下方回旋運動を促すこともできます。 3)骨盤ハンドリング  端座位にて骨盤の前後傾運動をハンドリングにて行います。この運動のポイントとしては、自動他動運動から自動運動へ徐々に切り替えていくこと、脊柱の伸展運動を促すこと、骨盤後傾運動時にただ後傾するのではなく大殿筋の収縮を意識してもらうことが挙げられます。 ○第3相に対するアプローチ 1)輪入れ  端座位にて前上方から輪を渡し腰背部の伸展を促します。この運動は第1、2相に対しても効果的なアプローチになります。この運動では、輪を把持する際に骨盤がきちんと前傾運動し...

立ち上がり動作を評価するポイントとアプローチ(評価編)

こんにちは!  今日は立ち上がり動作を評価するポイントとアプローチについてお話をしようと思います。立ち上がり動作といえば理学療法士と思われる方も多いと思いますが、作業療法士にとってもとても大切な動作です。なぜなら立位で行うすべての動作において立ち上がり動作は必要な動作であるからです。そのため、作業療法士としても立ち上がり動作をきちんと評価ができる必要があると考えています。 まずは、立ち上がり動作を構成する要素についてお話しします。 出典: 立ち上がり動作-力学的負荷に着目した動作分析とアライメント-  立ち上がり動作を重心を前方に移動する相と上方に移動する相に分けた場合、上記の運動が必要になります。  そのため、動作分析の際にはまず体幹を前傾することができているか、下腿の前傾は十分にできているかを評価する必要があります。 ・体幹筋力が弱い場合や腹筋群と脊柱起立筋群がアンバランスな場合     →体幹の前傾が困難 ・前脛骨筋や下腿三頭筋が弱い場合     →下腿の前傾が不十分  また、筋力だけでなく可動域制限がないかも評価するポイントになります。  次に腰背部の伸展ができているか、下肢の抗重力伸展ができているかを評価する必要があります。 ・脊柱起立筋群や臀筋群の筋力が弱い場合     →腰背部の伸展が困難 ・抗重力筋(主に大臀筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋)が弱い場合     →下肢の抗重力伸展が困難 となります。  もちろん、上記は基本的な評価のポイントであるため、この要素以外にもたくさんの構成要素があるということを念頭においてくださいね。 そして、立ち上がり動作における体幹の動きと下肢の各関節との関係性について、わかりやすい関係式がありますので載せておきます。 出典: 立ち上がり動作-力学的負荷に着目した動作分析とアライメント-  上記の図を説明しますと、立ち上がり動作時に、股関節角(H)と足関節角(K)の角度を膝関節角(K)の角度により相殺し、その不足分を胸椎角(T)にて相殺していることを意味しています。この関係式が成立しない場合、頚部...

「平成」から「令和」へ。今皆さんにお伝えしたいこと。

こんにちは!  ついに元号の発表がありましたね。「平成」から「令和」へ。とても美しい言葉と響だと思います。由来もとても興味深く僕なんかが思いつくような安易な言葉・意味ではなさそうですね笑。ただ元号が変わるだけではありますが、日本人でよかったなと感じる瞬間でした。  そして、新卒のみなさんや転職された皆さんは新年度が始まりましたね。平成もあと少し。僕自身も日々の診療でもっと気合を入れていかなきゃってつくづく思う今日この頃です。   そこで今日は新年度を迎える上でみなさんに伝えたいことをお話しします。  まずは人生のビジョンを描きましょうということです。そして、その見据える先を目指す上で何を行ったらよいのか。行うことが決まれば今この瞬間から始めることが大切だと思います。そして、大切なことがもう一つ。人生のビジョンはいつ変わってもいいということです。ビジョンが変わっても、そこまで歩んできたプロセスは何の無駄でもないからです。まったく違うものに変わったとしても、それまで培ってきたことは必ず生きてきます。  例えば、優れた作業療法士になりたいと思ってスキルを磨いていたとしましょう。しかし、昔からの夢であったBARを始めたいと思い転職することにしました。まったく関係ない仕事に何を生かせるのかと思われる方もいると思います。しかし、それまでのプロセス、つまり、遊びたい時間を削って勉強に費やしスキルを磨き続けることができたのであれば、たとえ違う仕事で知識がゼロにしても、そのビジョンに合った努力をすることができるはずなのです。  僕は結果と同じ様にプロセスを大切にしています。どちらも欠けることはできない重要なことだと考えています。新卒の方々は、大きな夢を持っている方もいれば、あまり明るい未来を期待していない方もいるかと思います。仕事でも、趣味でもまずは何でもいいと思います。ただ、生きる上での指標をつくることで、人生の過ごし方が少しは変わるかなと思います。  そして、医療職に就かれる皆様へ。  超高齢化社会。そしてAIの発達。僕たちはいくら専門職とはいっても、いつかは淘汰される時代になると思います。僕の職場では今少しずつ介護職を任されるようになっています。でもそれではいけません。たとえば事務職員が看護師はできないでしょう。それと同じで似ている...