スキップしてメイン コンテンツに移動

深部腱反射を実施するにあたってのポイントと解釈の仕方

こんにちは!

 今日は深部腱反射(以下DTR)を実施するにあたってのポイントと解釈の仕方についてお話ししようと思います。
 DTRの検査はできても、腱反射のメカニズムや解釈の方法が難しいと思っている方も多いと思います。なので今回はポイントをまとめながら話させていただきます。

 DTRとは筋の伸張反射に由来する反射のことです。すなわち、DTRのメカニズムを理解するにあたって伸張反射のメカニズムを理解する必要があります。

 DTR時に発生する伸張反射は、速い筋伸張により生じる筋紡錘からの興奮が脊髄に伝わり、α運動ニューロンを興奮させ筋を収縮させる反射のことです。

 ○伸張反射のメカニズム
 ➀外力により筋紡錘が伸張する
 ➁Ia群線維(筋紡錘の興奮を脊髄に伝える線維)が伸張されたことを伝達する
 ➂α運動ニューロンが収縮の命令を筋に伝達する
 ④伸張反射が出現する

 というようにして伸張反射が出現します。DTRは、上位運動ニューロンの障害(脳血管障害など)で亢進し、反射弓の障害(頚椎症など)で減弱・消失します。
 この理由について少し説明しますと、普段は上位運動ニューロン(網様体脊髄路など)により筋の緊張をコントロールしています。しかし、上位運動ニューロンの障害では、筋緊張のコントロールがきかなくなり、伸張反射を抑制することができず、亢進する現象がおきます。また、反射弓の障害では、筋の伸張そのものが伝わらないため、減弱・消失する現象がおきます。

 次に筋緊張とDTRとの関係性についてお話しします。筋緊張とDTRは互いに関係しているのですが、同じというわけではありません。そのため、互いを区別して多角的に評価を行う必要があります。
 下記の図は筋緊張とDTRの関係性を示したものです。

深部腱反射における検査のポイント

・痙縮:DTRと筋緊張が亢進している場合
・弛緩:DTRと筋緊張が減弱している場合
・一見弛緩様:DTRはやや亢進しているが筋緊張が低下している場合
・強剛痙縮:DTRはやや亢進程度であるが筋が常時緊張している場合
→強剛痙縮と短縮の判断要素としては、ストレッチングや持続的伸張を行っても正常可動域よりマイナスである場合に短縮が混在している可能性があると推測します。

 これらを正しく評価するためには筋緊張の評価であるMASを併用する必要があります。また、筋そのものを触診し筋張力の程度を評価する必要があります。これらの検査から現在の筋肉の状態について総合的に評価することが大切だと考えています。

 そして、DTRを行うにあたってのポイントをお話しします。
 1)被験者の方がなるべく楽な姿勢で行う。
 2)正常の方でもDTRが亢進や減弱している場合があるため左右差を確認する。
 3)再評価を行う際はなるべく初期評価のときと同じ肢位や環境で行う。
 4)筋緊張が亢進している場合は筋腱移行部や筋腹中央部での反射も確認する。

 また、脳血管障害などの中枢神経系の疾患の方はDTRが回復段階の指標になるため、経過観察することが大切になります。この経過から予後の判断や筋緊張のコントロールがどこまで可能かなどの判断材料になります。

 今日はDTRを実施するにあたってのポイントと解釈の仕方についてお話ししてきました。DTRはMASなどの検査と組み合わせることで力を発揮すると思います。それぞれの検査結果から今の筋緊張の状態はどうなのか、今後どこまで回復するのかの評価を行う必要があります。今後、臨床で検査を行う際の参考にしてみてくださいね。

では今日はこの辺で。

コメント

このブログの人気の投稿

作業療法士に必要なPreADLの捉え方とみる視点

こんにちは!  今日は主に病院で勤務されている作業療法士の方へ向けて、PreADLの捉え方とみる視点についてのお話をしようと思います。このお話は、理学療法士や言語聴覚士の方も大切な内容だと思っています。  僕たち作業療法士は患者様のやりたいことを大切にしながら日々の診療を行っていると思います。いわゆるdemandの面に着目するということですね。しかし、この視点だけでなく、患者様に本当に必要な能力、すなわちNeedにも焦点をおく必要があります。患者様によっては、むしろこのNeedを重要視する場合もあります。  このNeedに焦点をおくということは、患者様の現在の能力だけでなく入院前にどのような生活を送っていたのかを知ることがとても重要になります。この入院前の生活のことを僕の職場ではPreADLと呼んでいます。  例えば入院前はどのような歩行形態であったのか(T-caneなど)、入浴はどこで行っていたのか(デイサービスなのか自宅なのか)、食事は誰が作っていたのかなど、患者様がどのような生活を送っていたのかを詳細に調査する必要があります。    そして、そこで大切になってくることが入院前の生活を知るだけでなく、なぜそのような生活を送っていたのかを考えることが大切になります。  T-cane歩行の方では、なぜT-caneが必要であったのか、デイサービスにて入浴を行っている方では、なぜ自宅での入浴ではないのかなど、本来行えているはずの生活に補助具やサービスを用いている要因は何なのかを考えなければなりません。そして、入院前の生活状況と生活を妨げている要因を踏まえた上で、現在の状況から目標を設定することが大切になってきます。  作業療法士は患者様が必要としている生活行為を考えながら、その人らしい生活をサポートすることが大切です。しかし、その人がどのような生活を送ってきたのか、その人が満足いく生活であったのかといった面を考える視点をもつことで、より生活というものを包括的に捉えることができるようになると考えています。これまで、このような視点についてあまり考えたことがなかった方は、今日お話した視点をプラスすることで生活というものをより幅広く捉えることができるようになるのではないかと思っています。  今日はPreADLの捉え方とみる視点についてお話しました。...

失語症を理解するために①~言語処理過程と症状の分類~

こんにちは。  連日、水害のニュースが相次ぎ心を痛める思いで日々過ごしています。皆様もどうかご無事でありますよう心から願っています。少しでも穏やかに過ごせる日が来ますよう祈っています。  今日は「失語症を理解するために」というテーマでお話しようと考えています。「失語といえばSTだ!」と思われる方もいるかもしれませんが、作業療法士としても失語を理解することはとても重要だと思っています。作業療法士の養成校では、ブローカ失語とウェルニッケ失語とは何か?程度にしか学ぶことが少ないかと思われますが、実際はより複雑で理解することが難しいものだと考えています。私も臨床で「どのような分類があり、アプローチが効果的なのか?」を知りたく、北海道大学の大槻先生の講義にて失語について学んだ過去があります。失語を理解し、作業療法の中にも、治療要素を組み込むことができると思いますので、まずは失語の分類や画像の見方についてのお話をしていきたいと考えています。 <言語処理の過程> 出典: 失語のみかた:よりよい治療・リハビリテーションのために  この図は、言語の処理過程とその障害により生じる症候、および、その言語の処理過程に関与する脳部位を示したものです。 情報の出入り口(モダリティとして音を用いる)⇒聴覚処理・構音実現 言語情報の出入り口(モダリティとして音を用いる)⇒音声処理・構音制御 音韻の処理(モダリティフリー)⇒音韻処理 語の処理(モダリティフリー)⇒語彙処理・意味処理  音韻の処理と語の処理(語彙処理・意味処理)は、モダリティがフリーであるため聴覚入力だけでなく視覚入力でも同じような処理過程を辿ります。 <失語症症状の分類> 【失構音(発語失行、アナルトリー)】 症状:構音の歪み・音の連結不良・抑揚異常を認める。   構音の誤り方に二重の非一貫性がある。   ①ある音素を構音しようとするとある時は誤り、ある時は正しく構音する   ⇒whenの非一貫性   ②誤る場合にその誤り方が一定ではなく、色々な誤り方をする   ⇒howの非一貫性 領域:左中心前回中~下部(下端以外)   ブロードマン4野中心の病巣:構音の歪み中心   ブロードマン4野+6野の病巣:構音の歪み+音の連結不良 ★失構音と構音障害の違い 失構音:音実現のプログラム・指令の問題 構音障害:音実現の実行器官の問題 【音韻性...

CKCとOKCにおいて知っておくべき基礎知識と臨床応用➁~実践編~

こんにちは!  今日は前回の続きとして「運動連鎖」の考え方をどのように臨床に生かしたらいいかのお話をしたいと考えています。  前回お話しした運動連鎖の概念については、 CKCとOKCにおいて知っておくべき基礎知識と臨床応用①~CKC・OKCとは~ をご参照ください。  まずは簡単にCKCトレーニングとOKCトレーニングの種類についてご紹介します。 ・CKCトレーニング:スクワット、レッグプレス、ブリッジング、片脚立位保持、タンデム立位保持など ・OKCトレーニング:レッグエクステンション、ヒップアブダクション、SLRなど  前回もお話ししましたが、CKCトレーニングは主に下肢のトレーニングで用いられます。なぜなら、上肢の運動を必要とする食事や更衣などの生活行為の大半がOKCの動き方をするためです。しかし、上肢でもトレーニングの一つとしてCKCトレーニングを行うことは、非常に効果的であると考えています。例えば、前鋸筋や僧帽筋の安定性を高めるのに効果的なローローや広背筋の筋力を高めるために効果的なプッシュアップがあります。また、手掌を壁につけた状態で肩甲骨を挙上・下制・内転・外転するような運動では、ローテーターカフの負荷を抑えた状態で肩甲帯周囲の安定化を図ることができます。高齢者の方では、ローテーターカフに微細な損傷がある方や前鋸筋が弱っている方も多く、CKCトレーニングの方がよりリスクを抑えたトレーニングになると考えることもできますね。  これらのことから作業療法士としても知っておいて損ではない知識だと思います。そもそも損する知識などはないんですけどね笑。 次にCKCトレーニングとOKCトレーニングの各メリットについてご紹介します。 ○CKCトレーニングのメリット ①複合的な筋に対してトレーニングを行うことができる。 ➁筋力トレーニングだけではなく、一つの動作として運動を行うことができる(運動学習に汎化することができる)。 ○OKCトレーニングのメリット ①個別筋に対してアプローチしやすい。 ➁シンプルに筋力向上を効率よく高めることができる。  OKCトレーニングによって、個別筋として筋力を高めることができていても、実際の動作になると発揮することが難しい方も多く見受けられます。そのため、個別筋としてのトレーニングに...