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7月, 2019の投稿を表示しています

大腿骨頸部骨折の基礎知識➁~リハビリテーション編~

こんにちは!  今日は大腿骨頸部骨折に関するお話の第2回になります。第1回は 大腿骨頸部骨折の基礎知識➀~分類・手術編~ をご参照ください。第2回では、大腿骨頸部骨折により入院されている方に対してどのようにリハビリテーション進めていくかのお話になります。  以前お話したように大腿骨頸部骨折は高齢者の4大骨折の一つと呼ばれるくらい頻度の高い骨折になります。そのため、老化による廃用症候群や短期間の安静臥床による廃用が進行しやすいケースが多いです。そのため、骨折側の下肢のトレーニングだけでなく、四肢・体幹を含めたトレーニングを評価を元に進めていく必要があります。まずは術式別のリハビリテーションの考え方についてお話します。 ○骨接合術後のリハビリテーションプログラム  骨接合術は以前お話したように主にCCS法とハンソンピンによる手術に大別されます。これらの内固定材料の違いによる術後成績は明らかな差はないとされています。手術方法に加えて、骨折部の安定性を注意深く観察・評価することが大切です。 骨折部が安定している場合・・・  術後早期(1日目~):疼痛自制内での患側股関節自動介助運動の開始             上肢・体幹・健側下肢(股関節以外)の廃用予防             DVT予防(弾性ストッキングの使用、足関節底背屈運動)  術後早期(2日目~):車椅子座位開始             座位保持練習開始(端座位、長座位)               座位でのADL動作獲得(主に食事、整容、更衣)      術後早期(4日目~):患側下肢への部分荷重開始             平行棒内起立・歩行練習開始(患側への荷重を促す)  亜急性期(1週間~):全加重開始             歩行器歩行→T-cane歩行→独歩へ             立位でのADL動作獲得(排泄、更衣、入浴)             応用動作練習開始(階段、床上動作)  回復期(6週間~):IADL動作獲得            セルフエクササイズ指導 骨折部が安定していない場合・・・  術後早期(1日目~):患側下肢完全免荷             上肢・体幹・健側下肢(股関節以外)の廃用予防             DVT予...

大腿骨頸部骨折の基礎知識➀~分類・手術編~

こんにちは!  大腿骨頸部骨折といえば高齢者の四大骨折の一つとして、臨床でよくお見かけする骨折かと思われます。高齢者での主な要因は転倒による骨折ですね。そこで大腿骨頸部骨折に焦点を当てて①分類・手術➁リハビリテーション➂生活指導と3回に分けてお話ししようと思います。  以前は大腿骨頸部骨折を内側骨折と外側骨折と分けて分類することが多かったのですが、現在は内側骨折を大腿骨頸部骨折、外側骨折を大腿骨転子部(転子間、転子下)と分類することが多くなっています。言葉の使い方として少しややこしくなっていますがこのように覚えていただければ良いと思います。  大腿骨頸部骨折の分類として一般的に知られているgarden分類について紹介します。 出典: 大腿骨頸部骨折のリハビリテーション StageⅠ:不完全骨折(骨製連続の残存) StageⅡ:完全骨折(転位なし、軟部組織の連続性は残存) StageⅢ:完全骨折(Waitbrecht支帯の残存) StageⅣ:完全骨折(完全に転位、骨頭への血行は途絶) ※Waitbrecht支帯:骨頭と頸部を結ぶ軟部組織  これらの分類が一般的ではありますが、現在はStageⅠ、Ⅱを非転位型、Ⅲ、Ⅳを転位型として2つに分類することが多いです。  次に大腿骨頸部骨折に対する手術の適応についてご紹介します。 <非転位型> StageⅠ:CHS法、CHS+CCS法、ハンソンピン StageⅡ:CHS法、CHS+CCS法、ハンソンピン <転位型> StageⅢ:人工骨頭置換術 StageⅣ:人工骨頭置換術 CHS法、CHS+CCS法:骨接合術の術式の一つ。手術侵襲が少なく、手術後の骨折部の安定性も比較的高いとされている。X-P所見や疼痛の有無を確認しながら、cutout(骨接合術後にscrewが骨頭から飛び出てしまうこと)に留意してリハビリテーションを進めていく。 出典: 大腿骨頸部骨折のリハビリテーション ハンソンピン:骨接合術の術式の一つ。皮切が少なく出血量も少ない。手術時間が短く手術後の疼痛が少ないのが特徴の術式。比較的若年層の骨折に実施されることが多い。CHS法と同じくcutoutに留意する必要がある。ピンのみの固定であるため、骨折部の安定性を確認しながら荷重や歩行を進めてい...

高齢者の排尿問題について考える

こんにちは!  7月も終盤にさしかかり暑さがきびしくなってきましたね。少し更新が遅くなってしまい申し訳ありません。少しずつではありますが更新していきたいと思います。  今日は高齢者における排尿問題について考えたいと思います。例えば入院されている対象者の中で布パンツで過ごされている方がどれだけいらっしゃるでしょうか。尿失禁されない方の中でもリハビリパンツを使用されている方って結構多いのではないかと思います。  「排泄行為」が日常生活においてどれだけ重要な役割を担っているかは考えるまでもないと思います。そこで皆さん、「オムツを着用してそこに排尿をしてください。」と言われた時に何の抵抗もなく行うことができますか。答えはNoだと思います。オムツを付けるという行為すらも抵抗感があるでしょう。医療機関や介護施設に従事していると、対象者の方のオムツやリハビリパンツ使用を当たり前と思ってしまう、いわゆる感覚が麻痺してしまう現象に陥りがちだと思っています。  僕の職場の元部長は排泄管理について新人であった僕にどうあるべきかを強く教えていただきました。例えば、「男性であれば立って行う習慣がある方が多いのだから、立って行えるように介入しなさい。」や、「服薬の問題だけでなく、生活習慣や生活リズムの問題にも目を向けなさい。」などといった内容であったことを強く覚えています。  入院されている対象者の方によっては、排尿の問題は恥ずかしくて言えないという方も多くいらっしゃると思います。そこで、対象者の思いを生活の中で感じることができるのか、その方自身が思い描く姿はどのようなものなのかを考えながら、アプローチを行う ことが大切です。  ここで少し基本的なお話をします。 出典: 高齢者の排尿・排便障害  成人の1日の尿量:平均1000ml~1500ml           600ml/日以下が乏尿、40ml/kg/日以上が多尿  尿量が150ml~200mlになると尿意を感じ、約300ml~400mlまで蓄尿することができます。 次に各障害の大枠についてお話しします。 畜尿障害:膀胱排尿筋の過活動、膀胱出口の抵抗減弱、尿道閉鎮圧低下etc     →尿失禁や排尿困難となる 排出障害:膀胱排尿筋の収縮力低下、膀胱出口の抵抗増大etc     →排尿...

CKCとOKCにおいて知っておくべき基礎知識と臨床応用➁~実践編~

こんにちは!  今日は前回の続きとして「運動連鎖」の考え方をどのように臨床に生かしたらいいかのお話をしたいと考えています。  前回お話しした運動連鎖の概念については、 CKCとOKCにおいて知っておくべき基礎知識と臨床応用①~CKC・OKCとは~ をご参照ください。  まずは簡単にCKCトレーニングとOKCトレーニングの種類についてご紹介します。 ・CKCトレーニング:スクワット、レッグプレス、ブリッジング、片脚立位保持、タンデム立位保持など ・OKCトレーニング:レッグエクステンション、ヒップアブダクション、SLRなど  前回もお話ししましたが、CKCトレーニングは主に下肢のトレーニングで用いられます。なぜなら、上肢の運動を必要とする食事や更衣などの生活行為の大半がOKCの動き方をするためです。しかし、上肢でもトレーニングの一つとしてCKCトレーニングを行うことは、非常に効果的であると考えています。例えば、前鋸筋や僧帽筋の安定性を高めるのに効果的なローローや広背筋の筋力を高めるために効果的なプッシュアップがあります。また、手掌を壁につけた状態で肩甲骨を挙上・下制・内転・外転するような運動では、ローテーターカフの負荷を抑えた状態で肩甲帯周囲の安定化を図ることができます。高齢者の方では、ローテーターカフに微細な損傷がある方や前鋸筋が弱っている方も多く、CKCトレーニングの方がよりリスクを抑えたトレーニングになると考えることもできますね。  これらのことから作業療法士としても知っておいて損ではない知識だと思います。そもそも損する知識などはないんですけどね笑。 次にCKCトレーニングとOKCトレーニングの各メリットについてご紹介します。 ○CKCトレーニングのメリット ①複合的な筋に対してトレーニングを行うことができる。 ➁筋力トレーニングだけではなく、一つの動作として運動を行うことができる(運動学習に汎化することができる)。 ○OKCトレーニングのメリット ①個別筋に対してアプローチしやすい。 ➁シンプルに筋力向上を効率よく高めることができる。  OKCトレーニングによって、個別筋として筋力を高めることができていても、実際の動作になると発揮することが難しい方も多く見受けられます。そのため、個別筋としてのトレーニングに...