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前頭葉の機能~前頭連合野に着目して~

こんにちは!

 最近の僕はというと、久しぶりの連休だったのですが、体調を崩してしまいやりたいことを何もできずに過ごしてしまうという何とも言えない休日でした。僕は気温の変化に弱く、月に1回くらいの頻度で風邪を引いてしまうのですが、ここ最近は絶好調な期間が長かったもので、やはり体調を崩すということは生活全体のパフォーマンスを低下させてしまうものだと痛感させられています。

 僕の話はこの辺にして、今日はここ1か月勉強をしていた前頭葉の機能についてお話したいと考えています。以前、「失語についてあまり詳しく知らないなー」と思っていた時に、近くで失語の勉強会があると知り、参加をさせていただいたのですが、目から鱗のお話ばかりでとても感銘を受けました。その延長上で、前頭葉についてもうちょっと勉強しようと思い、いろんな文献をあさって勉強をしてきたので、今日はその内容の一部をご紹介しようと思っています。「前頭葉って難しい」と思われている方はおそらく、前頭連合野の機能なのではないかなと思うので、この辺の話を中心にしていきたいと思います。


出典:前頭葉損傷による高次脳機能障害のみかた
まずは前頭葉の解剖に関する図を上記に記載していますので、図と照らし合わせながら進めていただければと思います。

前頭連合野を更に細かく分類すると・・・
➀前頭葉背外側➁眼窩皮質➂帯状皮質に分けられます。そこで、これらを損傷するとどのような障害が出現するのかを説明していきます。

➀前頭葉背外側
【遂行機能障害】
・「目的に敵った行動の計画障害」「目的に敵った行動の実行障害」とされている高次脳機能障害になります。
・神経心理ピラミッドでより上位に位置づけられる機能で、記憶、注意などの機能と複合的に関与しています。
・例えば「お湯を沸かして急須に入れコップに注ぐ」という行為でみれば、<水をやかんに入れる→コンロに火をつける→湧いたら急須に入れる→2~3分後にコップに入れる>というような順序を計画し実行する必要があります。記憶や注意機能が保たれているにも関わらず、「次に何をすれば良いか」がわからなくなる、といったものが遂行機能障害にあてはまります。

【転換障害】
・注意機能の中でも「転換性」と呼ばれている機能があります。簡単に説明すると、注意を向けているものから、別のものに注意を切り替える機能のことです。
・例えば「車を運転している時に、道路脇から人が飛び出してきたため急ブレーキを掛ける」という行為の中で<道路>に向けていた注意を<人>に切り替える必要がありますね。この時に、作用するのが注意機能の「転換性」と呼ばれるものになります。

【作動記憶(作業記憶、ワーキングメモリー)の中央実行系障害】
→作動記憶の細かなシステムと役割に関しては後日お話しますのでしばしお待ちを・・・


➁眼窩皮質(腹内側部)
【脱抑制(抑制障害)】
・行動に対して今まで抑制することができていたことが、抑制できなくなってしまう障害です。
・例えば車椅子に乗っていて、止まる時にブレーキを掛けなければいけないにもかかわらず、ブレーキを掛けずに立ち上がるといった行為が挙げられます。

【反社会的行動(暴力、暴言、薬物依存等)】
・自分の情動に対して抑制することが難しくなり、場にそぐわない発言や行動をしてしまう障害です。


➂帯状皮質(内側部、正中部)
【発動性低下】
・何事に対しても無気力、無関心になってしまう障害です。

【把握反射の出現】
・手掌に触れることで握ろうとする反応(原始反射の一つ)がみられるようになります。
これは、抑制機構を担っているはずの前頭葉内側面が損傷するためです。

【動作の駆動に関する障害】
・前頭葉内側面は運動開始前の準備の段階で活動するといわれています。そのため、自らの意図や記憶を動作の起点にする場合に、動作に対して不都合が生じます。
・「手を挙げる」などといった動作そのものを意図・意識して駆動することが難しくなります。


 前頭連合野は複雑な機能をもっており、まだ明らかにされていないことも多くあります。今日の内容では、3つに分類されることと、それぞれ違う役割をもっていることが伝わればいいのかなと思っています。作動記憶に関しては、1記事書けるくらいの内容になりそうなので、説明は省かせていただきました。眼窩皮質に関しては、まだ機能が明らかになっていない部分が多いため、今のところ僕が知る範囲でお話しています。例えば、脳画像をみた時に、「○○が出血しているから〇○が出現しそうだな」と推測することができれば、その方の病態を整理しやすくなると思っています。次は作動記憶についてお話したいと思いますのでどうぞよろしくお願い致します。

では今日はこの辺で。

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