スキップしてメイン コンテンツに移動

住宅訪問を行う際のポイントを各場所ごとに解説

こんにちは!

 今日は入院されている患者様の住宅訪問を行う際のポイントを各場所ごとに解説していきます。
 現在回復期病棟へ入院されている患者様の住宅訪問は、入院後1週間以内に行くことで算定をとることができるようになっていますね。僕の働いている病院は、小さな田舎町ですので、患者様のご自宅は昔ながらの土間があったり、各場所に高い段差があったりとご高齢の方が生活するには、生活しづらい環境であることが多くあります。

 病院のルールだからといって住宅訪問をただこなすのではなく、必ず目的をもって行くことが大切です。僕の病院の場合、住宅訪問にも、計測を目的とする場合とご本人様と一緒に行き動線上の動きを確認する場合があります。今回は、住宅訪問の中でも計測を目的とする場合についてお話しします(以前は退院後の住宅訪問も行っていたのですがリハ部の方針から今では行かないようになってしまいました)。

 まず居室やトイレなどといった各場所ごとのポイントについて解説します。

➀駐車場付近
 自宅の門前の交通状況、駐車場から玄関までの距離と整備状況、福祉用具の設置が可能かどうか(スロープ、段差昇降リフトなど)
➁玄関
 上がり框の段差、段差昇降する場合の支持物の有無(手すりや靴箱など)、玄関ポーチの広さ
➂居室
 ベッドの有無、トイレまでの動線の確認、フローリングor畳
④居間
 椅子、机の有無、トイレまでの動線の確認、日中主にいる場所はどこか(また、誰がどこに座っているのか)
➄トイレ
 トイレの高さと広さ、手すりの有無、洗面所の高さ
⑥キッチン
 コンロや流し台の高さ、使用頻度、電子レンジや冷蔵庫の場所と高さ、椅子の有無、しゃがみ動作や背伸び動作が必要かどうか
➆脱衣所、浴室
 ドアの形状、浴室への段差、浴槽の広さと深さ、手すりの有無、シャワーの有無、椅子の有無、福祉用具の設置が可能かどうか(シャワーチェア、移乗台など)
➇階段(2階まで移動する必要がある場合)
 段差の数、幅、高さ、使用頻度

 また、仏間がある場合は床上動作が必要かどうかや椅子の有無を確認する必要があります。洗濯物動作を行う場合は、物干し竿の高さや洗濯機から物干し竿までの距離を測る必要があります。みるポイントはその方によって様々ですが、どこを測るにしても、患者様や患者様のご家族からしっかりと情報収集しながらどのような生活を送っていたかを把握しながら行うことが大切になります。

 上記に挙げたポイント以外にも車の乗り口の高さを測ったり、利用しているバス停や公民館までの距離を測定したりと各患者様ごとに測る場所を変化させながら行っています。すべてのことに共通することとして、どこまでその患者様を心配することができるか、患者様の生活を想定することができるかが重要となります。これらを考えながら日々の訪問を行うことで、新たな気づきや自分なりの測り方をみつけることができるでしょう。

 また、写真を撮る際に僕は患者様の目線で撮るように心掛けています。患者様が歩いていたと思われる目線から写真を撮るということです。また、家庭菜園を行っていた方には、菜園場の写真を撮ったり、ペットを飼っている方には、ペットの写真を撮ったりしています。その写真を病院に持ち帰って患者様にみせることで、リハビリへの意欲促進やセラピストとの信頼関係の形成に役立つことがあるからです。計測するだけがセラピストの役割ではないということを覚えておいてくださいね。

 今日は住宅訪問を行う際のポイントを各場所ごとにまとめてみました。住宅訪問にも、たくさん行くことで慣れてしまいがちですが、各患者様によってみる視点やポイントは変わっていきます。このことを忘れないように、毎回必ず明確な目的をもって行っていただきたいと考えています。

では今日はこの辺で。


コメント

このブログの人気の投稿

作業療法士に必要なPreADLの捉え方とみる視点

こんにちは!  今日は主に病院で勤務されている作業療法士の方へ向けて、PreADLの捉え方とみる視点についてのお話をしようと思います。このお話は、理学療法士や言語聴覚士の方も大切な内容だと思っています。  僕たち作業療法士は患者様のやりたいことを大切にしながら日々の診療を行っていると思います。いわゆるdemandの面に着目するということですね。しかし、この視点だけでなく、患者様に本当に必要な能力、すなわちNeedにも焦点をおく必要があります。患者様によっては、むしろこのNeedを重要視する場合もあります。  このNeedに焦点をおくということは、患者様の現在の能力だけでなく入院前にどのような生活を送っていたのかを知ることがとても重要になります。この入院前の生活のことを僕の職場ではPreADLと呼んでいます。  例えば入院前はどのような歩行形態であったのか(T-caneなど)、入浴はどこで行っていたのか(デイサービスなのか自宅なのか)、食事は誰が作っていたのかなど、患者様がどのような生活を送っていたのかを詳細に調査する必要があります。    そして、そこで大切になってくることが入院前の生活を知るだけでなく、なぜそのような生活を送っていたのかを考えることが大切になります。  T-cane歩行の方では、なぜT-caneが必要であったのか、デイサービスにて入浴を行っている方では、なぜ自宅での入浴ではないのかなど、本来行えているはずの生活に補助具やサービスを用いている要因は何なのかを考えなければなりません。そして、入院前の生活状況と生活を妨げている要因を踏まえた上で、現在の状況から目標を設定することが大切になってきます。  作業療法士は患者様が必要としている生活行為を考えながら、その人らしい生活をサポートすることが大切です。しかし、その人がどのような生活を送ってきたのか、その人が満足いく生活であったのかといった面を考える視点をもつことで、より生活というものを包括的に捉えることができるようになると考えています。これまで、このような視点についてあまり考えたことがなかった方は、今日お話した視点をプラスすることで生活というものをより幅広く捉えることができるようになるのではないかと思っています。  今日はPreADLの捉え方とみる視点についてお話しました。...

失語症を理解するために①~言語処理過程と症状の分類~

こんにちは。  連日、水害のニュースが相次ぎ心を痛める思いで日々過ごしています。皆様もどうかご無事でありますよう心から願っています。少しでも穏やかに過ごせる日が来ますよう祈っています。  今日は「失語症を理解するために」というテーマでお話しようと考えています。「失語といえばSTだ!」と思われる方もいるかもしれませんが、作業療法士としても失語を理解することはとても重要だと思っています。作業療法士の養成校では、ブローカ失語とウェルニッケ失語とは何か?程度にしか学ぶことが少ないかと思われますが、実際はより複雑で理解することが難しいものだと考えています。私も臨床で「どのような分類があり、アプローチが効果的なのか?」を知りたく、北海道大学の大槻先生の講義にて失語について学んだ過去があります。失語を理解し、作業療法の中にも、治療要素を組み込むことができると思いますので、まずは失語の分類や画像の見方についてのお話をしていきたいと考えています。 <言語処理の過程> 出典: 失語のみかた:よりよい治療・リハビリテーションのために  この図は、言語の処理過程とその障害により生じる症候、および、その言語の処理過程に関与する脳部位を示したものです。 情報の出入り口(モダリティとして音を用いる)⇒聴覚処理・構音実現 言語情報の出入り口(モダリティとして音を用いる)⇒音声処理・構音制御 音韻の処理(モダリティフリー)⇒音韻処理 語の処理(モダリティフリー)⇒語彙処理・意味処理  音韻の処理と語の処理(語彙処理・意味処理)は、モダリティがフリーであるため聴覚入力だけでなく視覚入力でも同じような処理過程を辿ります。 <失語症症状の分類> 【失構音(発語失行、アナルトリー)】 症状:構音の歪み・音の連結不良・抑揚異常を認める。   構音の誤り方に二重の非一貫性がある。   ①ある音素を構音しようとするとある時は誤り、ある時は正しく構音する   ⇒whenの非一貫性   ②誤る場合にその誤り方が一定ではなく、色々な誤り方をする   ⇒howの非一貫性 領域:左中心前回中~下部(下端以外)   ブロードマン4野中心の病巣:構音の歪み中心   ブロードマン4野+6野の病巣:構音の歪み+音の連結不良 ★失構音と構音障害の違い 失構音:音実現のプログラム・指令の問題 構音障害:音実現の実行器官の問題 【音韻性...

CKCとOKCにおいて知っておくべき基礎知識と臨床応用➁~実践編~

こんにちは!  今日は前回の続きとして「運動連鎖」の考え方をどのように臨床に生かしたらいいかのお話をしたいと考えています。  前回お話しした運動連鎖の概念については、 CKCとOKCにおいて知っておくべき基礎知識と臨床応用①~CKC・OKCとは~ をご参照ください。  まずは簡単にCKCトレーニングとOKCトレーニングの種類についてご紹介します。 ・CKCトレーニング:スクワット、レッグプレス、ブリッジング、片脚立位保持、タンデム立位保持など ・OKCトレーニング:レッグエクステンション、ヒップアブダクション、SLRなど  前回もお話ししましたが、CKCトレーニングは主に下肢のトレーニングで用いられます。なぜなら、上肢の運動を必要とする食事や更衣などの生活行為の大半がOKCの動き方をするためです。しかし、上肢でもトレーニングの一つとしてCKCトレーニングを行うことは、非常に効果的であると考えています。例えば、前鋸筋や僧帽筋の安定性を高めるのに効果的なローローや広背筋の筋力を高めるために効果的なプッシュアップがあります。また、手掌を壁につけた状態で肩甲骨を挙上・下制・内転・外転するような運動では、ローテーターカフの負荷を抑えた状態で肩甲帯周囲の安定化を図ることができます。高齢者の方では、ローテーターカフに微細な損傷がある方や前鋸筋が弱っている方も多く、CKCトレーニングの方がよりリスクを抑えたトレーニングになると考えることもできますね。  これらのことから作業療法士としても知っておいて損ではない知識だと思います。そもそも損する知識などはないんですけどね笑。 次にCKCトレーニングとOKCトレーニングの各メリットについてご紹介します。 ○CKCトレーニングのメリット ①複合的な筋に対してトレーニングを行うことができる。 ➁筋力トレーニングだけではなく、一つの動作として運動を行うことができる(運動学習に汎化することができる)。 ○OKCトレーニングのメリット ①個別筋に対してアプローチしやすい。 ➁シンプルに筋力向上を効率よく高めることができる。  OKCトレーニングによって、個別筋として筋力を高めることができていても、実際の動作になると発揮することが難しい方も多く見受けられます。そのため、個別筋としてのトレーニングに...