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投稿

3月, 2019の投稿を表示しています

作業療法士に必要なPreADLの捉え方とみる視点

こんにちは!  今日は主に病院で勤務されている作業療法士の方へ向けて、PreADLの捉え方とみる視点についてのお話をしようと思います。このお話は、理学療法士や言語聴覚士の方も大切な内容だと思っています。  僕たち作業療法士は患者様のやりたいことを大切にしながら日々の診療を行っていると思います。いわゆるdemandの面に着目するということですね。しかし、この視点だけでなく、患者様に本当に必要な能力、すなわちNeedにも焦点をおく必要があります。患者様によっては、むしろこのNeedを重要視する場合もあります。  このNeedに焦点をおくということは、患者様の現在の能力だけでなく入院前にどのような生活を送っていたのかを知ることがとても重要になります。この入院前の生活のことを僕の職場ではPreADLと呼んでいます。  例えば入院前はどのような歩行形態であったのか(T-caneなど)、入浴はどこで行っていたのか(デイサービスなのか自宅なのか)、食事は誰が作っていたのかなど、患者様がどのような生活を送っていたのかを詳細に調査する必要があります。    そして、そこで大切になってくることが入院前の生活を知るだけでなく、なぜそのような生活を送っていたのかを考えることが大切になります。  T-cane歩行の方では、なぜT-caneが必要であったのか、デイサービスにて入浴を行っている方では、なぜ自宅での入浴ではないのかなど、本来行えているはずの生活に補助具やサービスを用いている要因は何なのかを考えなければなりません。そして、入院前の生活状況と生活を妨げている要因を踏まえた上で、現在の状況から目標を設定することが大切になってきます。  作業療法士は患者様が必要としている生活行為を考えながら、その人らしい生活をサポートすることが大切です。しかし、その人がどのような生活を送ってきたのか、その人が満足いく生活であったのかといった面を考える視点をもつことで、より生活というものを包括的に捉えることができるようになると考えています。これまで、このような視点についてあまり考えたことがなかった方は、今日お話した視点をプラスすることで生活というものをより幅広く捉えることができるようになるのではないかと思っています。  今日はPreADLの捉え方とみる視点についてお話しました。...

これから作業療法士として働くみなさんへ

こんにちは!   もうすぐ新年度が始まりますね。  これから臨床で働くみなさんは今ドキドキかと思います。そしてこれからどんな作業療法士を目指そうか夢でいっぱいの方もいらっしゃると思います。 今日はこれから作業療法士として働く上で僕がお伝えしておきたいことをお話しようと思います。  まずは国家試験お疲れ様でした!合格発表も終わり、無事合格をいただいた方々は就職準備でお忙しい中かと思います。  今、みなさんは達成感に満ち溢れているだろうなと思います。僕もそうでしたので。ただ、みなさんも学校の先生方から言われていると思うのですがここからがスタートです。養成校が溢れている昨今、ぼんやりしているとどんどん淘汰されていく時代になってきていますので。ここからが勝負です。ここからだ!という気持ちはもう今の時点でもっていてください。   そして、作業療法士としてだけでなく新社会人としてもスタートします。社会人として経験されてからなられる方も医療・介護の現場は少し特殊な社会ですので新人の気持ちはもっていた方がいいのかなと思います。  まず、僕が考える仕事を行う上で心がけるべきと思うことは、 ①先輩の助言やアドバイスは自分の意見が違ってもしっかりと聞く。 ②仕事に対する悩みや疑問は必ず先輩に聞く。 ③どんなに新人で間違っていても自分の考えはもち続ける。   この3点です。①はまず仕事を円滑に行う上は人間関係が大切です。周りの意見なんてどうでもいいと思う方は組織としてなりたたないので起業をするか個人経営で働くしかないと思います。どんなに自分の意見が違ってもまずしっかりと聞くこと。そして、一度自分で考え自分自身の行動に結びつける。これでいいのです。③でお話ししているように自分の意見はもっていていいのです。むしろもっておかないといい作業療法士にはなれません。ただ、先輩に反発するのとは訳が違います。自分の意見はあくまで自分の意見であり周りにおしつけるものではないのですから。そして、②は悩みをすべて自分で解決するのではなく先輩をどんどん頼ってもいいということです。僕が意識していることは、自分の考えを述べた上でどのようにすることが良いかを聞くということです。いくら勉強をしていても、先輩...

第14回熊本作業療法学会に行ってきました(昨年ですが)!

こんにちは!  今日は昨年参加をさせていただいた熊本作業療法学会について少しお話しできればと思います。今年は残念ながら仕事へ行かなければならず参加することができませんでした。せめて島津先生の公開講演は聞きたかったですがしかたない。  昨年の教育講演が非常におもしろく感想を記していたためブログでもかいつまんでお話しできればと思います。  第14回熊本作業療法学会では元田先生が教育講演を行われました。  元田先生は自分の母校の先輩であり、現在は様々な施設の運営を中心に活動されています。講演会の時間は1時間半程度でしたが勉強になるお話がたくさんあり、あっという間の時間でした。  講演会のテーマは「地域における作業療法士の関わり」です。作業療法士と地域はこの高齢者社会において非常に重要な役割を担っているため、最前線で活躍されている元田先生は、現在どのような活動をされているのか興味深いものでした。  お話の中でとても印象に残った言葉は、作業療法士は「生活」をみなければいけないが、「暮らし」を含めてみる視点をもってほしい、というものです。ここからは僕の解釈ですが、「生活」は、対象者の方が生きる上で最低限必要なもので、「暮らし」は、その人らしい生活のことだと思います。この「暮らし」をみて、その人らしい生き方のお手伝いをすることが作業療法士のあるべき姿なのかなと感じました。この「暮らし」というのは、生きがいともリンクしていて、例えるなら魚釣りに行くことかもしれないし、パチンコに行くことなのかもしれません。それは十人十色です。これらの生活をみるためには教科書通りの知識だけでは難しいです。そのためには知識だけでなく知恵も必要ですし、自分自身の生き方も反映されるのかもしれません。やっぱり作業療法士は人間力なんだなとつくづく思いました。 以上簡単にですが講演について僕が考えたことをお話しさせていただきました。  あとは皆さんがどのような治療をしているのか口述発表で学ばせていただきました。発表者は2〜3年目の方が多かったかなと思います。ハンドセラピーにおいては、臨床にでてほとんど勉強をしていなかったので学ぶことが多々ありました。  口述発表の感想ですが、講演会の内容ともかぶるのですがその人らしい生活に焦点...

関節可動域の基本の「き」②

  こんにちは!  今日は関節可動域制限における拘縮のメカニズムと関節可動域練習の方法についてお話したいと思います。  関節可動域制限の要因については以前お話した 関節可動域の基本の「き」① をご参照ください。  まず拘縮のメカニズムについてお話しします。下図をご覧ください。 出典: 関節可動域制限の発生メカニズムとその治療戦略  これはラットの足関節を最大底屈位で不動化することで人間の尖足拘縮をシュミレーションした実験例です。この実験では1週間で拘縮が発生しており、不動期間を延長するごとに拘縮が進行していることがわかりますね。  このように、たった1週間の不動期間で拘縮は発生してしまうということがわかります。いかに関節可動域練習が大切かがわかる実験ですね。 次に拘縮のメカニズムについて、分子メカニズムの観点からお話しします。 出典: 関節可動域制限の発生メカニズムとその治療戦略  上図は拘縮のメカニズムについてわかりやすく図解してあります。これらを説明しますと、 ①不動期間が1〜2週経過すると、マクロファージを介したIL-β(炎症性サイトカインの一つ)とTGF-β(線維化促進を有するサイトカイン)の作用により、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化が始まる。 ②不動期間が4週以上経過すると、更に骨格筋の低酸素状態となり、筋線維芽細胞への分化が助長される。 ③線維化が進行し、筋性拘縮が発生する。  これらのメカニズムにより筋性拘縮が発生するというわけです。筋性拘縮が助長されると、関節性拘縮の進行へとつながっていくため、まずはいかに筋性拘縮を予防できるかが大切になります。  不動化により活発化する炎症性サイトカインへのアプローチについては、以前 筋力低下に対するアプローチを免疫学的視点で考える で少しお話ししていますね。  以上簡潔に拘縮のメカニズムについてお話しさせていただきました。次に関節可動域練習の方法についてお話しさせていただきます。  ポイントとしては、 ①筋緊張が亢進している場合は個別筋に対してストレッチングを行い、関節可動域練習を実施すること。 ②基本的に関節弛...